NORTH MISSISSIPPI ALLSTARS interview SOMEONE CALLS IT A FAMILY BUSINESS IN THE SOUTH. (C) LAST HURRAH
親父と衝突しても、どういうわけか 最後は必ず親父が正しいってことになっちゃうんだ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 「俺達は現代のサザン・ロックをやっているんだ」とルーサー・ディッキンソンは言い切った。 そのココロはカテゴリーとしてのサザン・ロックではなく、南部で生まれた正真正銘、ホンモノのロックンロールを、自分達はやっているんだ、ということなんだと思う。たぶん。 04年のボナルー・フェスティバルにおける熱演を収録したライヴ・アルバム『HILL COUNTRY REVUE : LIVE AT BONNAROO』を挟んで、この7月、彼らが2年ぶりにリリースした4thアルバム『エレクトリック・ブルー・ウォーターメロン』は、まさにルーサーの言葉を裏づける充実作だ。オアシスのノエル・ギャラガーが客演した前作『POLARIS』のモダンと言うか、ある意味洗練された味わいも確かに良かった。しかし、この連中には新作の原点回帰とも言える泥臭いサウンドがやはり似あう。 その彼らが今年6月、ジャパン・ブルース・カーニバルに出演するために日本にやって来た! 東京では一夜限りの単独公演も実現。2時間に渡って、ぶっというグルーヴに貫かれた演奏を披露した。その熱演は個人的には今年のベスト・ライヴと言ってもいい素晴らしさだった。 その本番直前、楽屋でルーサー(Vo&G)とコディ(Dr)のディッキンソン・ブラザーズと彼らの盟友クリス・チュウ(B)の3人にインタビューすることができた。 ●みなさん、物心がついた頃から身の回りには音楽があふれていたと思うのですが、ミュージシャンになりたいと考えるようになったのは、何歳ぐらいの頃だったんですか? ルーサー 「12歳ぐらいかな。うーん、覚えてない。って言うか、そんなことを意識したことはないんじゃないか」 ●つまり、ミュージシャンになるのは、ごく自然なことだったと? ルーサー 「イエス。まさにそうだね」 ●じゃあ、学生時代、音楽以外に夢中になったものってないんですか? コディ 「ないね。クリスは大学でアメフトをやっていたけどね」 クリス 「でも、それは奨学金を貰うためにやってただけで、大学を出たあともやりたいとは思っていなかったよ。とは言え、ミュージシャンになりたいと思っていたわけでもないけどね(笑)」 ルーサー 「ま、音楽一筋ってことさ。高校時代には、すでにバンドをやっていたんだから、他にやることなんてなかったよ」 ●ルーサーとコディは、クリスとはどこで知り合ったんですか? ルーサー 「って言うか、ガキの頃からのつきあいなんだよ。幼馴染みってやつさ。初めて一緒に演奏したのは、確か91年だったよな」 クリス 「ああ。高校の同窓会のパーティーだったな」 ●ルーサーとコディが以前やっていたD.D.T.はパンク・バンドだったそうですね。 コディ 「パンク系のクラブで演奏していただけで、D.D.T.はプログレ・バンドだったんだよ」 ルーサー 「ま、最初はパンクだったかもしれないね。だからって、別にパンクをやろうと考えていたわけじゃない。単にテクがなかっただけで、パンクしかできなかったんだよ(笑)。それからサイケ、プログレっていうふうに変化していったんだよ」 ●じゃあ、パンクやメタルに影響を受けたというわけではないんですね。 ルーサー 「いや、そんなことはないよ。パンクは大好きだったよ。特にブラック・フラッグはね。だけど、そういう演奏ができるかどうかは、また別の話でさ、俺達が演奏すると、何でもブルース・ロックになっちまうんだよな」 ●コディは? コディ 「モトリー・クルーやクワイエット・ライオットは好きだったよ」 ●え、そうなんですか!? それはかなり意外ですね。 ルーサー 「あの頃の俺達はさ、(クサを吸う真似をして)な、分かるだろ?(笑)」 ●昔、ある雑誌が「サザン・ロック・リバイバル」と題して、ノース・ミシシッピ・オールスターズ、キングス・オブ・レオン、ドライヴ・バイ・トラッカーズを取り上げていたんですけど、サザン・ロックをやっているという意識はありますか? ルーサー 「ああ、もちろん。俺達は現代のサザン・ロックをやっているんだ」 ●現代のサザン・ロックですか。では、70年代のサザン・ロック・バンドと自分達の違いと言うと? ルーサー 「パンクやラップ/ヒップ・ホップの影響も受けていることだね。だから、同じサザン・ロックでもサウンドが違うんだ」 ●自分達は南部の人間だという誇りは持っていますか? ルーサー 「ああ、もちろんさ」 ●いい意味でも悪い意味でも、南部はアメリカの他の場所と違って、特別な場所と言われますよね。何がそんなに違うんだと思いますか? ルーサー 「これさ(と手に持っているギターを見せる)。やっぱり音楽が違うんだよ。それと食べ物だね」 コディ 「南部にはすごいミュージシャンが本当に多いんだよ」 ルーサー 「南部では音楽は家族全員でやるものなんだよ。バーンサイド一家しかり、俺達ディッキンソン一家しかりね」 ●たとえば、ルーサーとコディが以前共演したジョン・スペンサーを初め、昔から多くのミュージシャンが南部詣でをして、ロックンロールの何たるかを学ぼうとしてきましたよね。でも、南部で生まれ育った3人にとっては、それは学ぶものではなく、自然に体にしみこんでいるものだ、と? ルーサー 「そうさ。俺達にとって、音楽は学ぶものじゃない。クリスは教会でゴスペルを歌っていたし、俺達は親父に叩きこまれた。そうやって生活の中で自然自然と身につけてきたのさ」 ●誰でも若い頃は親に反抗するものだけど、ルーサーとコディもそうだったんですか? ルーサー 「そりゃいろいろあったさ(笑)。だけど、親父と衝突しても、どういうわけか最後は必ず親父が正しいってことになっちゃうんだ」 ●2人のお父さんのジム(・ディッキンソン。ご存知、伝説のセッション・ミュージシャン兼プロデューサー)はいまだにルセロ他の若いバンドと一緒に仕事をしているけど、彼の感性が鈍ってきたと思うことはないですか? ルーサー 「それがまったくないんだから驚きだよな。きっとロックンロールは人間を若いままでいつづけさせるんだろうな」 コディ 「親父の情熱には、いまだにインスピレーションを受けているよ。自分が行き詰まったときは、特に励まされるね。俺はレコーディングのエンジニアリングにも興味があるんだけど、親父から学ぶことはまだまだあると思うよ。ところで、ルセロの名前が出たけど、彼らの最初の2枚のアルバムは聴いたかい?」 ●もちろん、聴きましたよ。 コディ 「好きかい?」 ●ええ。 コディ 「あの2枚は俺がプロデュースしたんだよ(笑)」 ●あ、そうでしたね! ルーサー 「イエー、イエー! あいつらはホントすごい連中だよ。(本誌7号を見て)あいつらを表紙にしてくれるなんて、友達としてうれしいよ。連中に代わって、お礼を言うよ」 ●こちらこそ、そんなふうに言ってもらえてうれしいですよ。ところで、新作の『エレクトリック・ブルー・ウォーターメロン』は素晴らしい作品になりましたね。 ルーサー 「そうかい? そう言ってもらえると、うれしいね。実は今回は特に自信作なんだ。作りはじめたときから、はっきりと方向性が見えていた。って言うのは、(ミシシッピのファイフ奏者の)オサー・ターナーが亡くなったとき、これまで自分達が何をやってきたか、そしてこれから何をやるべきか改めて考えさせられたからなんだ」 クリス 「それに今回はレコーディング費用も押さえられたしね」 ルーサー 「イエー、イエー! そうだ。今回、親父にプロデュースーを任せたんだけど、これまでで一番プロダクションが良かったと思う。素晴らしいコラボレーションだったよ」 ●日本盤のボーナス・トラック「ドラゴンスレイヤー」にはジョン・メイヤーがゲスト参加しているそうですね。それがちょっと意外でした。3人にとって、メイヤーの音楽って上品すぎませんか? ルーサー 「そうかい? でも、俺は彼の音楽を聴いたことがないから、よく分からないけどな(笑)」 ●え、そうなんですか? コディ 「彼の2ndアルバム『ヘヴィアー・シングス』は好きだよ。素晴らしいギタリストだよね。以前、彼の前座をやったことがあるんだよ。メイヤーとレコーディングした日はロバート・ランドルフともセッションしたんだけど、すごい1日だったね」 クリス 「ああ、あんな体験は滅多にできないね」 (インタビュー◎山口智男) |
(C) DOUG ALLSOPP
写真は今年6月3日の単独公演の模様(@渋谷DUO MUSIC EXCHANGE) |
『ELECTRIC BLUE WATERMELON 』 NORTH MISSISSIPPI ALLSTARS (BUFFALO) |