JOHN PAUL KEITH & THE ONE FOUR FIVES interview

WE LIKE SIMPLE ROCK 'N' ROLL.
WE'RE NOT TRYING TO BE MUSICAL GENIUSES.

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 誘われるままメンフィスに来て、ある晩、ステージに立ったら楽しかったんだよ(苦笑) 

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ジョン・ポール・キースという名前を聞いて、ピーンと来た人は、90年代後半、アメリカのオルタナティヴ・カントリー・シーンを熱心に追いかけていたにちがいない(もちろん、「え、ジョンとポールとキース・リチャーズ?!」なんてサムいことは言いっこなしだ)。

 レコーディングにこそ参加してはいないものの、スティーヴ・アールに認められたV-ロイズを皮切りにサイアー・レコードに飼い殺しにされたネヴァーズ、オルタナ・カントリーのワンダー・ボーイという評価を決定づけたハヴノッツ、ライアン・アダムスのピンクハーツ、そして2枚のアルバムを残して解散してしまったステイトサイドと、これまでジョン・ポールはノックスヴィル、ナッシュヴィル(ライアン・アダムスとはここで出会った)、ニューヨーク、アラバマ州バーミンガムと全米各地を渡り歩きながら音楽活動を続けてきた。

しかし、才能に見合う成功を収めることは、ついにできなかった。

一度は引退も決意したそうだ。

それでも彼は音楽から離れることはできなかった。いや、音楽のほうがジョン・ポールを放さなかったと言うべきか。

新天地メンフィスで音楽活動を再開したジョン・ポールは現在、そこで出会った新しい友人達と組んだワン・フォー・ファイヴスを率い、これまでにないほど充実した活動を展開している。

もちろん、それはマイスペースなものにはちがいない。しかし、今年(08年)4月、7インチ・シングル「Lookin' For A Thrill」を自主リリースしたジョン・ポールは早速、デビュー・アルバムのレコーディングに着手すると、ファット・ポッサム・レコード傘下のビッグ・リーガル・メス・レコードと契約を結ぶなど、一歩一歩、確実に新たなキャリアを進めている。

『Spills & Thrills』と名づけられたデビュー・アルバムは現在、リリース待機中だ。



●まず、ステイトサイド解散の理由について教えてもらえますか? 2ndアルバム『Phonograph』のリリース後、全米ツアーを行い、さあ、これからという時だっただけに、「なぜ、突然?」と、ずっと不思議だったんですよ。

「ステイトサイドは、いいバンドだったけど、2ndアルバムを完成させるまでに時間がかかりすぎたんだよ。それは俺達に、ろくな機材も金もなかったからではあったんだけど、アルバムが完成したとき、俺達はすっかり疲れきっていたんだ。おまけにヨーロッパで契約していたレーベルとは意見の食い違いもあったしね。大いにがっかりさせられたよ。10年間、バンドを続け、レコードをリリースしようとがんばってきた結果がそれなのかと思ったら、なんだかアホらしくなって、もうこんなことやってられるかって思ったんだよ」

●その後、アラバマ州バーミンガムを離れ、メンフィスに移りましたね?

「ああ。メンフィスに住んでいた妹から『メンフィスに来てみたら? バーミンガムに止まる理由なんてないでしょ』って誘われたんだ。他に考えもなかったからね(苦笑)。誘われるままにメンフィスに来てみたら、妹が早速、ビール・ストリートで演奏している知り合いのミュージシャン達に紹介してくれたんだ。最初は、演奏するつもりなんてなかったんだけど、ビリー・ギブソンってミュージシャンからずっと、ビール・ストリートで演奏している彼のバンドに誘われつづけ、1回つきあえば、彼もあきらめるだとうと思って、ある晩、ステージに立ったんだ。それが楽しかったんだよね(苦笑)。また演奏したいと思ったよ。その夜、そこにいた他のミュージシャン達からも、一緒にやろうって誘われたしね。それで、週に2、3回、ビール・ストリートで演奏している複数のバンドでギターを弾きはじめたんだ」

●自分のバンドでアルバムもリリースしているジョン・ポールにとって、バンドの一ギタリストに徹することに抵抗はなかったんですか?

「いいや、全然。むしろ、その経験はとても役に立ったよ。ブルースについて、多くのことを学ぶと同時にライヴを見にきた人達が何を求めているかってことについても教えられたよ。それにギターについてもね。ギターに対する愛情を、改めて呼び覚まされたと言ってもいい。俺はそれまで、ずっと曲作りとバンドのフロントに立つことを気にかけるあまり、ギターを演奏することを、ずっとないがしろにしてきた。だけど、ビール・ストリートで演奏しはじめたとき、改めてギターを練習することや、それによって上達することに興味を持ったんだ」」

●最近は、自身のワン・フォー・ファイヴス以外にジャック・オブリヴィアンやハーラン・T・ボボとも演奏しているけど、彼らとはどんなふうに知り合ったんですか?

「ジャックとはワン・フォー・ファイヴスでペダル・スティールを演奏しているジョン・ホイットモアを通して知り合ったんだ。ジョンは元々、ジャックのテネシー・ティアージャーカーズのギタリストだったんだよ。その時、ちょうどジャックは6週間のヨーロッパ・ツアーを計画していたんだけど、家族持ちのジョンは6週間も家を空けられなかった。それでジョンが代役に俺を推薦したってわけさ。ハーランはジャックのバンドのベーシストだったんだけど、ヨーロッパ・ツアーではオープニング・アクトも務めた。つまり、そのヨーロッパ・ツアーで、俺がジャックとハーラン両方のバックでギターを演奏したんだ。それがきっかけで、俺はハーランとも一緒に演奏するようになったんだ」

●新たにジム・ディッキンソンの新バンド、スネーク・アイズにも参加しましたね?

「ああ。ジムとはロス・ジョンソンとジェフ・エヴァンズの紹介で知り合ったんだ。ロスがアレックス・チルトンやタヴ・ファルコのパンサー・バーンズ、それにジェフの'68カムバックのメンバーだったことは知っているだろ? ジムがプロデュースしたロスのソロ・アルバムのセッションに呼ばれたんだよ。 そのセッションのバンドは、俺がギターで、リズム隊はレイニング・サウンドのグレッグ・ロバーソンとジェレミー・スコットで、ティアージャーカーズのアダム・ウッダードがオルガンだった。ジムはそのバンドを気に入って、自分のバンドにすることにしたんだ」

●ワン・フォー・ファイヴスは、どんなふうに結成したんですか?

「しばらくビールで演奏したあと、また自分のバンドをやろうと考えた。そして、メンフィスのミッドタウンに出入りしはじめたんだ。ミッドタウンでは、みんなが自分の曲を演奏している。つまり、カヴァーばかり演奏しているビールとはまた違ったシーンがあるんだよ。その2つのシーンは決して混じらない。だから、ミッドタウンでミュージシャンと出会うには時間がかかったよ。それで、やっとポータケッツにいたマーク・スチュアートと知り合い、すぐに意気投合した。ポータケッツは俺の最初のバンド、V-ロイズに似ていたからね。その後、俺達はジョン・アーグローヴス、ケヴィン・キュビンズ、ジョン・ホイットモアとワン・フォー・ファイヴスを結成して、たった1回リハーサルしただけで、初ライヴをやったんだ。クラブは俺達に2時間演奏することを求めたよ。だから、ろくに練習もしていないカヴァーを何曲もやる羽目になったけど、おかげで俺達はバンドとしてまとまったんだ」

●バンド名の由来は?

「ちょっとしたジョークなんだよね。ワン・フォー・ファイヴって、ほとんどのアメリカン・ミュージックで使われている基本的なコード進行でさ、とてもシンプルなんだよ。シンプルなロックンロールが大好きな俺達にぴったりの名前だと思わないかい?(笑) 俺達は音楽の天才になろうとしているわけではないんだよ。今、ロックンロールの世界にはうぬぼれ屋が大勢いるだろ。俺はそういう連中があまり好きじゃないんだ」

●ワン・フォー・ファイヴスを組んだとき、どんなアイディアを持っていましたか? 7インチ・シングルは、あなたが以前やっていたハヴノッツを思わせますね。カントリーに影響を受けたロックンロールが、ワン・フォー・ファイヴスの主流ですか?

「俺にとってカントリーの影響は、もうずっとあるものなんだ。俺は田舎の出身で、カントリーを聴きながら育ったようなものだからね。それにバディ・ホリー、ボビー・フューラー・フォー、リッキー・ネルソンといった50年代〜60年代の音楽もいまだに聴いているし、ボビー・ヘルムのようなカントリーのアーティストも大好きだ。だから、時々、ハヴノッツのようなトゥワンギーな音楽をやりたい気分になるんだ。でも、同時にステイトサイドのようなロックンロールをやりたい気分にもなる。『Lookin' For A Thrill』は、もっといろいろな影響がミックスされているんだよ」

●メンフィスで生活することや新たな音楽キャリアを楽しんでいるようですね。メンフィスに来たことがきっかけになって、新たな人生が開けたと考えていますか?

「もちろん。メンフィスに来て、俺の人生は変わったよ。メンフィスで過ごした、この3年は、ナッシュヴィルで過ごした10年よりも有意義だった。メンフィスは、音楽にとって一番大事なことはフィーリングなんだって教えてくれたよ。ここでは自分が演奏したいと思えば、何でも演奏できる自由を感じているよ。そして誰もが協力的なんだ。メンフィスは本当に特別な場所さ。こんな所は他にはないよ。 本当に気に入っているんだ」


(インタビュー◎山口智男)




『Lookin' For A Thrill』
John Paul Keith & The One Four Fives
(Neveready Recording Co.)




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