CUFF THE DUKE interview

GET OUR MUSIC OUT TO AS MANY PEOPLE AS POSSIBLE
AND PLAY AS MUCH AS POSSIBLE

Cuff the Duke
(C) Omer R. Cordell


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音楽なんだからさ、楽しんで、悲しんで、怒ったり……
何でもいいのさ。どんな感情を抱いてもらってかまわないよ。
それが自然さ。


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わずか2年で地位を確立したレーベル、Three Gut Recordsから02年にデビューしたカフ・ザ・デューク。

その時点でメンバーは若干22歳であった。

多くのライヴをこなし、ヘイデンを送り出したHardwood Recordsに移籍しての意欲作『Cuff The Duke』は発売1週間で1000枚を売り上げた。まだまだカナダ全国区には程遠いがこのアルバムと共に組まれているツアーはオンタリオをくまなく回ると同時に、カナダ全土へのツアーも予定されている。

今後の飛躍がとても楽しみであり、それを可能にするポテンシャルを持つバンドである。

ヴォーカル兼ギターのウェイン・ペティが新作について丁寧に質問に答えてくれた。彼のイントネーションからアルバムに対する自信がヒシヒシと感じられた。



●まずカフ・ザ・デュークとはどういう意味ですか?

「よく古着のTシャツを買っていたんだ。そのシャツにはいろいろな言葉が書かれていたんだけれど、なんて書いてあるかなんて重要ではなくてね。その中の一枚に“カフ・ザ・デューク(Cuff The Duke)”と書かれたものがあったんだ」

●響きが良かったと?

「うん、完璧だったね。なんかカントリー・ミュージックっぽいけれど実際違うし、とにかく響きがオリジナルだよ。みんなこの意味を自己流に解釈して説明したがるんだけれど、はっきり言って僕自身よくわからないんだ(笑)」

●いつギターを始めましたか?

「14歳のときだよ、僕たちみんな14歳で始めた。でも確かポール・ローマン(ベーシスト)は12歳のときだったかな」

●それでは1stアルバムについて話を聞かせてください。どの曲も、実際2ndアルバムもそうですが、“written by Cuff the Duke”とクレジットされていますよね? どのように曲を作っているんですか?

「僕が中心的な役割を担うときもある。実際いくつかの曲は2人で書かれているしね。でも基本的にはみんなでアイディアを持ち寄っているんだ。ビートルズもそうだよ。インタビューのビデオを見たことがあるんだけれど、似たような考え方を持っていて、誰がベスト・アイディアを持っているかが大切なんだ。ジョンが最高のメロディーを持ってきて、ポールが『すげー! 何やりゃーいいんだ。この曲をもっとよくするにはどうすればいいだ!?』てな具合にさ。僕らもこんな感じなのさ。誰かがかっこいいイントロや、完全な曲を持ってきてもいいけれど、それを『さぁ、どうやってもっと良くするか』って考える。だから僕たちは共同作業を行っていると言える。それに僕たちはそれぞれ異なる方向からメロディーが浮かんでくるからさ」

●なるほど。では詩はどうですか?

「基本的にすべての詩は僕が書いている。1stアルバムはすべて僕だし、2ndアルバムも“There was a Time”以外は僕が書いた。この曲はポールが書いたんだ。まぁ、誰が歌うか、歌う奴が書けっていうのが正しいもののやり方なんじゃないかな?『OK、おまえが歌うんだろ? じゃー、おまえの役目だ』って具合さ」

●(笑)去年もカフ・ザ・デュークのコンサートは見たんですよ。先月のHorseshoeでのライヴは1年ぶりだったのですが、去年に比べると見違えるほどよかったんです。すごくエネルギーを感じました。1年間ツアーをしてそこから何を得ましたか?

「去年、君が見たものはちょうど新しい曲を書き終えたばかりだった。1年間ツアーをしたことで、セット・リストの練り方、曲の配置の仕方をまず学んだよ。曲やエナジーの流れというものを大切にするようになった。ずっと同じ曲調の流れにならないようにとか、急にポケットに落ちたかのように、沈んでしまわないようにとかさ。去年はそういうところがまだあったんじゃないかな。あとは1年間プレイしたことで当然演奏もバンドとして良くなったよね」

●ステージでのアクションも変わりましたよね。去年はただ突っ立ってギターを弾き、歌う。でもこの前はギターを振り回し、時に客席まで降りていきましたよね。その辺もツアーで得たことですか?

「え〜と、前からそういうアクションはしていたけれどね。でも僕らは曲によりフォーカスを当てたいと思っていたし、別にアクションが必ず必要とも思っていなかったのさ。楽しい時間を過ごしたいのと、大きな音でやる。でもいまではそういうアクションが自然と出てくるようになったのは確かだよ」

●この前のHorseshoeでのライヴ(6月11日)で、セイディーズが演奏をしているときに彼らの曲を(客席で)歌っていましたよね。セイディーズのどの辺が好きですか?

「僕らみんな彼らが大好きだよ。初めてのカナダ横断ツアーは彼らとだった。オープニングとしてね。素晴らしい人柄だしね。彼らはもちろん何度もツアーした経験があり、僕らは新参者。右も左もわからなかったんだ。彼らはショーでの話し方やツアーの仕方などたくさんのアドバイスをくれたんだ」

●セイディーズ以外に影響を受けているアーティスト、好きなミュージシャンは誰ですか?

「僕らはみんなビートルズ、ニール・ヤング、ハンク・ウィリアムズ、ウィルコ、ソニック・ユース、ラモーンズ、ストゥージズが好きだよ。オシュワでの素晴らしかったことの一つは、LPを取り扱っているレコード・ショップがあったこと。昔のレコードがたくさんあったし、そこでMC5 やストゥージズなどのパンク・ロックと出会ったのさ」

●ということは、パンク・ロックに一番影響されている?

「その通り。僕らにとってパンク・ロックの影響力は大きいよ」

●2ndアルバムは1stアルバムよりもカントリー・ロックの影響が色濃く出ていると感じました。アルバムを作る前に良く聞いたアーティストなどはいるのでしょうか?

「僕らはレコーディングを2回に分けて行ったんだけれど、ちょっと思い出せないけれど、一つよく覚えているのはスターズ。アーツ・アンド・クラフツ(Arts and Crafts/レーベル名)から出た『Set Yourself on Fire』というのが彼らの一番新しいアルバムでよく聴いたよ。彼らはカナダのバンドさ。あとはランディー・ニューマンもよく聴いたよ」

●それは詩のためですか?

「うん、もちろんそういう面はあるね。スターズも知的な美しい詩を書くんだ。詩だけではもちろんないけれどね」

●2ndアルバムは1stアルバムに比べると本当にメロディーが格段によくなったと感じたんですよ。だからこういう質問をしたのですが。

「僕らはビートルズや、ベックが大好きだからさ。そうだ、ベックにもたくさん影響を受けているよ。2ndアルバムを作るにあたり、僕らはもっとメロディアスな曲を作りたかったんだ。でも、シンプルであることは保ちつつね。さらに似たような曲調にならないように気をつけたよ。だからストリングスを入れたり、(手で波を作りながら)こういう流れを描き出したかった」

●ピアノの音は2ndアルバムにおいてとても重要な楽器と思ったのですが、ピアノを使うというアイディアはどこから来ているのですか?

「え〜と、僕らはトロントでのニック・ケイヴのショーにオープニング・アクトとして招かれたんだ。ワァオ!、もう2年も前のことだよ。とても興奮したよ、だってニック・ケイヴだからね。彼がピアノで演奏する曲がとても素晴らしくてね。本当に素晴らしかった。アイディアは彼のコンサートによって得たといえるかな。ポールと僕はピアノ弾けるんだ。そこで僕はいい感じのエレクトリック・ピアノを借りてきて、最終的にはそれを買った。2ndアルバムの1つの曲はピアノで書いたんだ。ポールもそうした。僕らは新しい音が欲しかったんだ。まぁ、新しい音と言うより、新しい楽器、僕らにとって新しい楽器を使いたかった。1stでも少しは聞こえるだろうけれどね。時々もうギターで曲が書けないということに陥らないかな? そういう時ピアノを弾いたりするといろいろなヴァラエティーが浮かんでくることが多いんだ」

●なるほど。Isara Craig(アイラ・クレイグ)について話してくれますか?(彼女は「The Ballad of Poor John Henry」で美しいハーモニーを聴かせてくれている。)

「彼女はオシュワで一緒に育った幼なじみなんだ。ちょうどミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせたばかりなんだけれど、彼女の声を何回も聴いていて、いつの日か僕らの曲か、誰の曲でもいいけれどデュエットしたいと思っていたんだ。あの曲のメロディーは僕が書いたんだけれど、気づいたかな? 僕が上で彼女が下を歌っているハーモニーだということを」

●(笑)そうなんですよね、まさにそれが僕の次の質問でした。なぜそうしたんですか?

「(笑)そうなんだ。こういうハーモニーは、特に男女のハーモニーにおいて自然ではないんだよね。当初は僕が下のパートを歌ったんだけれど、ふと、僕が上を歌ったらどうだろうって思ったんだ。まぁ、それでやってみたら、良かったんだよね。何で俺が上を歌っているんだ?? ってな感じで聴こえてきた。不思議な感じだけれど、かっこいいよね」

●うん、僕も同じ感想を持ちました。

「うまく作用したよ」

●ベックが好きということですがどのアルバムが一番好きですか?

「『One Foot in the Grave』が大好きだよ。K-Recordsから発売されたものだけれど、本当に素晴らしい。『Mellow Gold』も大好きだよ。初メジャー・アルバムだけれどこちらも素晴らしい。何でかって、すごくローファイなんだよ。全然オーヴァー・プロデュースされていないし、でも凄く評価されたし、セールスも良かった。とても刺激を受けたよ。『ローファイなアルバムを作っても、まだマス・マーケットで勝負もできるんだ』ってね」

●『Mellow Gold』が発売されたのは確か94年ですよね。何歳でした?

「14歳だった」

●ということは今25歳ですか? 80年生まれ?

「そうだよ」

●同い年ですね。

「そうなんだ(笑)。ちょうど1世紀の4分の一を歩んだ2人ってね(笑)」

●(笑)ニルヴァーナはどうなんですか? 好きですか?

「そうそう! いつも『影響を受けた人は?』って質問されると、彼らのことを言い忘れるんだよ。もちろん彼らの影響は僕らにとってとても大きいものだよ。多分あまりにも大きすぎてさ……曲、音楽、とにかく素晴らしいし……」

●そうですよね、特に僕らの世代にとってグランジ・ロックはとても重要と言うか……。

「その通り。ただたまに忘れちゃうだけで『あ、そういえばニルヴァーナ』みたいなさ(笑)。でも僕がギターを始めたきっかけはニルヴァーナだったよ。世界中に僕と同じようなキッズがたくさんいるだろうね。僕は彼(カート・コベイン)の詩とシンプルな曲調に感動するよ。詩は意味がしっかりとあるし、シンプルな展開でさ。それに彼はパンク・ロックとポップ・ミュージックをつなぎ合わせたんだ。彼がやったことはそれ以前に誰かがやったいかなるジャンルよりも抜きん出ていた。これはあくまで僕の意見ね。彼の音楽にはどこか尖ったところがあり、でもメインストリームに入っていって見事成功を収めた。僕らは本当に大きな影響を受けたよ」

●人々にあなたたちの曲を通して何を伝えたいですか?

「う〜ん……。多くの曲は男女の恋愛、破局などを歌っている。よくある生活を題材にしているんだ。曲というのは特に“これ”というストーリーは必要ないと思っている。だからみんなそれぞれの意味で解釈をしてもらってかまわない。もし、どこか違う国の人が聴いてくれて、例えば日本人とかさ。彼らが僕の曲と自分の経験、体験を関係付けてくれた嬉しいよ。でも、音楽は音楽なんだよ。僕はただみんなが僕らの曲を気に入ってくれればそれでいい。で、それぞれの解釈をしてくれてかまわない。僕が書く曲は多分僕についての曲だろう。君が聴いたらたぶん何か思うところがあるかもしれない。それが僕が願っていること。楽しむためにやりたいようにして欲しい。音楽なんだからさ、楽しんで、悲しんで、怒ったり……何でもいいのさ。どんな感情を抱いてもらってかまわないよ。それが自然さ。本当にただみんなに楽しんで欲しい。それだけさ」

●では最後の質問です。あなたにとってゴールはなんですか?

「うわぁ……なんだろ。……僕らは世界中をツアーしたいよ。日本、ヨーロッパなどね」

●アジアのどこかには行ったことありますか?

「誰も行ったことないんじゃないかな。僕の友達の何人かはアジアに行ったことがある。いつもバンドで行くことを願っているから、本当にいつか行きたいよ。ブロークン・ソーシャル・シーンやスターズはツアーを行ったしね。他のカナディアン・バンドと一緒に行くのは多少簡単なんじゃないかな。まぁ、本音としてはより多くの人に音楽を聴いてもらうということだよ。そして、可能な限り演奏し曲を書き続けることさ」


(インタビュー◎山本尚)




『CUFF THE DUKE』 CUFF THE DUKE
(HARDWOOD)



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