THE DEADLY SNAKES interview

WE'D LIKE TO BE HEARD IT AS A PEACEFUL RECORD



今年8月、10年間に渡る活動に終止符を売ったトロントのガレージ・パンク・バンド、デッドリー・スネークス。これはラスト・アルバムとなってしまった『PORCELLA』発表直後の貴重なインタビューだ。  フロントマンのアンドレ・イーサー(VO,G)はデッドリー・スネークス時代、すでにソロ・アルバムをリリースしている。俳優としても活躍しているエイジ・オブ・デンジャーこと、マックス・デンジャー(K,VO)もまた、才能あふれるミュージシャンである。 解散後の新たな展開に期待したい。


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アルバムのテーマは怒りと言うより、混乱や失望、落胆なのさ

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ハリケーン・カトリーナの被害が深刻なニューオリンズへのベネフィット・コンサートにセイディーズ、ヒドゥン・カメラとともにプレイしたデッドリー・スネークスにサウンド・チェックの時間にインタビューを行なった。

 フレンドリーそうで、そうでもなさそうなマックスと、落ちついて淡々と話すアンドレ。好対照な2人のメイン・ソングライターがバンドの核であることはまちがいない。どちらが抜けてもこのバンドは存続できないだろう。マックスのアンドレに対する信頼感が、彼のしぐさや目線から感じられた。

 彼らの最新アルバム『PORCELLA』はともすれば攻撃的に聴こえるかもしれないが、聴き返すほどに彼らの平和に対するメッセージが伝わる作品だ。アーティスティックなコントラストを詰め込んだ新作を中心に話を聞いた。




●まず音楽の話しの前に俳優としての話を伺いたいのですが。

マックス「OK(笑)」

●映画『ランド・オブ・ザ・デッド』は、どのように役を得たのですか?

マックス「単にオーディションに参加したのさ。仕事として役者もしているからさ」

●撮影中のスペシャル・エピソードなどあったら聞かせてくれますか?

マックス「う〜ん。特に思い浮かばないな。撮影した多くのクールなシーンを監督は映画で使わなかったんだ。俺の腕や足が切り取られているシーンとかね。でも確か日本版にはマーケティングも兼ねて、そのシーンが入っているんじゃなかったかな? だって日本人ってそういうグロテスクなもんが好きなんだろ?(笑)」

●(笑)確かに! 音楽と俳優、それぞれどのようなところに惹かれているのですか?

マックス「俺はそんなに俳優としてやっているわけじゃないし、音楽により時間と体力を使っているよ。特に最近は音楽に集中しているしね。2つとも良い仕事さ。1つはギャラがよく、もう1つはまったく金にならないのさ。だから俺は他の日を使って大工なんかもしなきゃ〜ならないのさ(笑)」

●あなたの家族は役者ですか?

マックス「いいや。俺の弟は少しやっていたけれどね」

●次回作の予定などはあるのですか?

マックス「いいや。全て終わって今はバンドに集中しているのさ」

●エイジ・オブ・デンジャー(マックスの芸名)とはどういう意味なのですか?

マックス「俺達の友達にジェイコブ・フェリーという奴がいるんだが、俺達が16、17歳の頃、映画を撮ったのさ。そのタイトルが『AGE OF DANGER』というんだ。そこで俺とアンドレは初めて会ったんだ。俺達はその映画に役者として出たんだけれど、ガキがドラッグに溺れていくというくだらない内容の映画なんだが、とても面白かった」

アンドレ「その(映画の)ガキは路上生活をしたがるのさ。ナイスな家の住人なのにね」

マックス「最高だね!!」

アンドレ「親とも良い関係だし愛されているのに、奴は路上生活を止めようとしないのさ」

マックス「奴は爆弾になりたいのさ! ほら、くだらないだろ!?」

●(笑)それはインディー映画ってことですよね?

マックス「これは学校の課外活動みたいな感じで撮影したものだから、リリースはされてないよ(笑)」

●ということは、その映画のタイトルが気にいっているから自分自身をそう呼ぶんですか?

マックス「そんなところだね。冗談みたいな感じだよ」

●なるほど。では、音楽について話しましょう。まずはタイトルの『PORCELLA』とは何ですか?

マックス「16世紀頃のローマの法律で……」

●イタリア語ですか?

マックス「そう。人々が豚を食用に使い始めた頃、つまり食いだしたんだな。法律でOKが出たのさ」

●なぜ、そのタイトルにしたのですか?

マックス「まず音が気に入ったんだ」

●イタリア語を話せるんですか?

マックス「いいや、俺はハンガリー系だぜ!? 話せねーよ。分かんないけど、いろいろな要素が今回の音楽とマッチしていると思ったのさ!」

●アルバム・ジャケットは赤い血の波のように見えたのですが、これは何ですか?

マックス「それはアンドレが描いたんだよ」

アンドレ「これはCDの裏を見てもらえると分かるんだが、豚なんだ。豚の頭。この部分をアップにした物を表のジャケットに使ったのさ。こいつは上を見上げているんだ。色は特に波というわけではないが、血とかさ。動物の体内に流れる血をイメージしているんだ」

マックス「皮膚や血や骨、体内に流れるものを感化させるはずさ」

●では、この中ジャケの家は?


アンドレ「これは俺達がレコーディングに使ったところさ」

●この家はとっても平和的にポツリと建っていますよね。でも、ページをめくるとあなた達が話すように体内に流れる血など、ちょっとグロテスクですよね。このコントラストはとっても面白いのですがコンセプトを説明してもらえますか?

アンドレ「アルバム・タイトルが示すように豚、飲食、文化、人間の消耗、消費などとともに暴力などを取り上げ……」

マックス「でも、それらの中にはどこか平和的要素も混在しているんだ。音楽も同じで曲はハッピーな感じだけれど、要素として暗い部分も入っている。その織り成すコントラストをうまく表現したと思うよ」

●素晴らしいです。僕もアルバムを聴いていて同じ感覚を持ちましたよ。

マックス「おまえも!? ナイス! 俺達のコンセプトはまさにそこだよ。何て言えばいい、この感覚?」

アンドレ「コントラスト? 逆説的?」

マックス「うん、なんかさ〜、わかんね」

アンドレ「平和的な要素とポップな要素、ダークな部分との混在は創造物の間に、ある種の緊張関係を生み出していて……」

マックス「トリックみたいなもんさ」

アンドレ「リスナーがそれらのおかげで、より興味深く聴いてくれることを願っているよ」

●このアルバムはマックスプロデュースしましたよね。60年代のような音ですよね。

マックス「俺達はその辺の時代の音楽をたくさん聴いているし、その辺の音が好きだからね」

●どういうことに気を遣ってプロデュースしましたか? 初期ストーンズっぽい音なんて意識したのですか?

マックス「特に意識はしていない。注意したことなんてたくさんありすぎて説明できないな。レコーディングが終了しても、たくさんやることがあったしね。ストリングスなどはバンドのレコーディング後に録音したんだ。俺達にはエンジニアがいたから、彼がマイクなど、全ての技術的なことは行なったんだ」

アンドレ「マックスの仕事なのさ。全てのアイディアが詰まっているか、アイディアがちゃんと予定通りの形で、予定通りの場所に収まっているかを確かめる作業はね。全てがゴチャゴチャにならないようにするために、マックスに任せているのさ」

●どうやって、全員のアイディアをまとめるんですか?

マックス「バンドのメンバーみんな、曲を書くんだ。曲を持ってきた段階で、メインの奴が説明をする。『こんな感じで展開していく』とかね。その後に話し合いと演奏をしていく。まぁ、どうやっているかなんて言葉にできないよ」

●「LET IT ALL GO」について話してもらえますか?

マックス「まず、それはカヴァー・ソングだ。エルモー・ウィリアムスという人のね」

●この曲のイントロってローリング・ストーンズっぽいですよね?

マックス「分かる。なんだっけな〜。タイトルは思い出せないけれど、確かにそうだね」

●最近のストーンズはどう思っています?

アンドレ「長い間ずっと同じメンバーでやり続けて、最高のバンドとして認められているし、いいんじゃない」

●最近のストーンズも好きですか?

アンドレ「コンサートを見にいこうとは思わないけれどさ」

マックス「新作は聴いたか?」

●いいえ。

マックス「(親指を下に向けてニヤリ)」

●(爆笑)この『PORCELLA』はどのように聴いて欲しいですか?

マックス「平和的な要素を感じながら聴いて欲しいよ。ここには怒りはないんだ。怒りと言うより混乱や失望、落胆なのさ。登場人物として、ある男がいる。そいつは何かについて怒っているけれど、そこから冷静さを取り戻し、あきらめていく。基本的にそういう話だからさ」

●今のトロントについて一言あります?

マックス「『イラツク都市、トロント』ってところだね。俺達の1stレコードに"I DON'T WANNA HAVE TO HATE THIS CITY"っていうのがある。なぜならトロントは圧迫感があるんだよ。でもいまだに好きさ」

アンドレ「トロントについては、歌の題材にしている。トロントの何が俺達に影響を与えているかってことをね。俺もいまだに好きだよ」


(インタビュー◎山本尚)



『PORCELLA』
THE DEADLY SNAKES
(In The Red)




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