DRAG THE RIVER interview

IT'S SOMETHING DIFFERENT TO DO...WE LOVE PUNK ROCK


(c) Brad Gobdel
Chad - J.J. - Dave - Spacey Casey - Jon


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曲のアイディアはいつもそこにある。
それがどこにも行かないように祈るだけさ

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コロラド州デンヴァー近郊の町フォート・コリンズの5人組ドラッグ・ザ・リヴァー。

ハイウェイを使って全米各地を旅して回る現代のカウボーイやホーボー達の心を歌うカントリー・ロック・バンドだ。

メンバーはオールのチャド・プライス(VO,G)、アームチェアー・マーチャンのジョン・スノッドグラス(VO,G)、スペイシー・ケイシーこと、ホット・ロッド・サーキットのケイシー・プレストウッド(STEEL G)、ラヴ・ミー・デストロイヤー〜ピンヘッド・サーカスのデイヴ・バーカー(DR)ら割と知られたパンク・バンドのメンバー達ばかりだ。

その彼らが郷愁を誘うなごみナンバーや孤独がヒシヒシと伝わるバラード、そして、いかにもならず者風のロック・ナンバーを大真面目に演奏している。

そこがいい。

たぶん、バンド名はハイウェイを川に見立て、旅人達がそこに落としていった(沈めていった)さまざまな想いを掬いあげる……そんな意味があるんじゃないか?

ジョン・スノッドグラスがインタビューでも言っているように元々はチャドとジョンのサイド・プロジェクトだった。しかし、その後、活動は本格化。00年発表の『HOBO'S DEMO』を皮切りに、すでに6枚のCD(ライヴ盤とEPも含む)を発表している。

僕は前作の『HEY BUDDIES...』から聴きはじめたのだけれど、今年6月にリリースした『IT'S CRAZY』は彼らのソングライティングと演奏が格段に進歩したことを印象づける快作だ。『IT'S CRAZY』が今後、バンドの代表作として多くの人に認められることはまちがいない。




●ドラッグ・ザ・リヴァーはどんなふうに始まったんですか?

「確か94年か95年だったと思うんだけど、チャドと知りあって、時間が空いたとき何かやろうかって話になってさ。やっているうちに曲もできたんで、ジェイソン(・リヴァーモア。彼らがレコーディングに使っているブラスティング・ルームのプロデューサー兼エンジニア)がスタジオワークをいろいろ勉強している間、レコーディングさせてもらったんだ」

●その時は、どんなバンドにしようと考えていたんですか?

「いやぁ、チャドとただ遊んでただけだよ」

●遊びとは言え、本業のバンドとは違うことを始めたってことは、何かしら理由があったんじゃないですか? たとえば、パンク・ロックを演奏することに飽きていたとか。

「パンク・ロックはまだ好きだよ。ただ、ちょっと違うことをやってみたかっただけさ」

●カントリーやカントリー・ロックはいつ頃、聴きはじめたんですか?

「ガキの頃さ。チャドも俺もカントリーはずっと好きだったよ。カントリーを聴きながら育ったようなもんだからね」

●では、好きなアーティストは?

「うーん、いろいろいるからなぁ。どうしても一人挙げなきゃいけないって言うんだったら、ウィリー・ネルソンだね」

●じゃあ、嫌いなアーティストは?(笑)

「さあ、どうだろ? 他のアーティストの悪口は言わないことにしてるんだ。だって、それは俺がやるべきことじゃない。ただ、いわゆるショウビズ・カントリーは、アートとは言えないと思うよ。ラジオでかかっているカントリーの90%はクズだね」

●ドラッグ・ザ・リヴァーのライヴには、どんな人達が来るんですか?

「ライヴをやる町にもよるけど、ほとんどはカントリー、ロック、パンクのファンだね。時々、そういう連中の親や子供が来ることもあるけどね。意外に幅広いみたいだよ」

●曲を作るとき、どんなところからインスピレーションを得ているんですか?

「わからないよ。だって、いつもそこにあるんだからさ。それがどこにも行かないように祈るだけさ(笑)。場合にもよるけど、曲のアイディアはいつも山ほどあるんだ。心配はいらないよ」

●カントリーってある意味、悪魔の音楽だと思うんですよ。だって、カントリー・ソングの大きなテーマって言ってみれば、人間の“悪い行い”ですよね。誰もが善人になりたいと思っているにもかかわらず、“悪い行い”をやめられずにいる。それは悪魔にとり憑かれているからだって思想が、大雑把な解釈ですけど、カントリー・ソングには流れていると思うんですよ。そういう意味で、ジョンにとり憑いている悪魔って何だと思いますか?

「うーん、何だろうな。酒かな。いや、それしかないね。やっぱり、酒だよ」

●とり憑かれていると言えば、ジョンは火星にとり憑かれているんですか?

「え?」

●だって、以前やっていたバンドはアームチェアー・マーチャン(=Martian。火星人)で、ドラッグ・ザ・リヴァーの自主レーベルはマーズ・モーターズでしょ?

「ハハハハ。そいつはバカげた質問だ。そんなことはわからないよ。君は何でもシリアスに考えるタイプの人間らしい。レコードでヤギに“Hey Buddies...”と言わせるようなもんだ(※前作『HEY BUDDIES...』のアートワーク)。そうそう、『HEY BUDDIES...』のアナログ版では“Gabba Gabba Hey Buddies...”と言わせるつもりなんだ。もちろん、ヤギには革ジャンを着せてね。まさにバカげてるだろ? イカれてるね(It's Crazy)」

●ウェブでベースのJ.J.がルセロのTシャツを着ている写真を見つけたんですけど、彼らとは知りあいなんですか?

「ああ、彼らはいい友達だよ。5、6年ぐらい前だったかな。俺の彼女がメンフィスで彼女の友達のバンドのライヴに連れてってくれたんだ。それが彼らだったんだよ」

●そう言えば、デンヴァーにはシックスティーン・ホースパワーとかスリム・セスナズ・オート・クラブとかゴースト・バッファローとか、いわゆるゴシック・カントリーと呼ばれているバンドがけっこういますね?

「シックスティーン・ホースパワーはメンバーのサイド・プロジェクトも含め、ほとんどヨーロッパで活動しているんじゃないかい? チャドは彼らが好きみたいだけど、俺は彼らのライヴって見たことがないんだ。前に聴いたやつはよかったけどね。彼らはこの辺じゃほとんどライヴをやらないんだよ。スリム・セスナとゴースト・バッファローは、いい友達だよ」

●ところで、『IT'S CRAZY』はバンドの代表作とも言える素晴らしい作品ですね。レコーディングするときは、どんなことを重視したんですか?

「新作を作るにあたっては、37曲用意して、そこから最も気持ちがこもっていると感じられる曲を選んだんだ。そして、それらがスピーカーから聴こえたとき、その気持ちが聴いている人達にちゃんと伝わるように心がけたよ」

●レコーディング中の何かおもしろいエピソードってありますか?


「山の中でビッグフットを見たんだ。ウソじゃないよ。だって、ここはコロラドだぜ!(ビッグフットはロッキー山脈で目撃された。コロラドにはロッキー山脈がある)」

●前作の『HEY BUDDIES...』でもやっていたけど、CDの最後に、また全曲リピートするってアイディアがいいですね。

「だってホラ、少なくともCD代の分はきっちり楽しんでもらいたいからね(笑)」

●十二分に楽しませてもらいましたよ。今日はありがとうございました。

「俺の答え、マヌケに聞こえなきゃいいけど。今、早朝なんだけど、昨夜は寝てないんだ。ツアーから戻ってきたばかりで、昼と夜がひっくり返っちゃってるんだよね(苦笑)」


(インタビュー◎山口智男)




『IT'S CRAZY』
DRAG THE RIVER
(Suburban Home)


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