GARY LOURIS (ex.THE JAYHAWKS) interview

ENOUGH CONFIDENCE TO WRITE SONGS BY MYSELF


ジェイホークス(左から3番目がゲイリー)



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

ジェイホークスは終わった。
だから、そろそろ次のステップを少しずつ踏んで行こうと思っているんだ


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



「飾らない人柄」、「気さく」で「優しい笑顔」−−ゲイリー・ルーリスを形容する時、真っ先に使いたい言葉だ。

本人の口から「ジェイホークスはもう解散したよ」と改めて聞いたときはやはり寂しさを感じた。しかし間髪入れずに続けられた彼の言葉−−「ソロになれば日本へも行く機会ができるだろう」から、彼が今後の活動にエキサイトしていると同時に、無限の可能性を感じていることが分かり、素直に彼の今後の活動を見守ろうと決めた。

サウンド・チェック前の控え室で行われたインタビュー。最後は多少、駆け足になってしまったが、ゲイリーの生の声だ。

ジェイホークスについての思い。

人生を有意義にしようとする意気ごみ。

パーマ、紫色のメガネ、優しい目、これらの容姿。

ゲイリー・ルーリスは今、目の前に座っており、人柄そのままに丁寧に語り始めた−−。



●まず始めに、80年代から90年代にかけてのミネアポリスの音楽シーンについて聞かせてもらえますか? ジェイホークスはリプレイスメンツやソウル・アサイラムなどとともに当時、その周辺の音楽一派の中心だったかと思うのですが、どのようにシーンは形成されていったのですか?

「ミネアポリスはいい所なんだ。いろいろなミュージシャンがいるけれど、みんな独自性を求めている。リプレイスメンツやソウル・アサイラムそれぞれバンドの色があり、僕らだって僕らの色があったと思う。もちろんみんな影響しあっていたと思うけれど、その中でも自分達の色を大切にしていたと思う。そうした中で生まれてきたんだ。誰かが先頭に立って何かを成し遂げたと言うより、あの辺の連中みんなで影響し合い、じわじわ注目されてきたというのが正しい見方じゃないかな」

●最新作の『RAINY DAY MUSIC』は僕の03年のNO.1レコードでした。マーク・オルソンがバンドを去ってすでに3作目ですが、マークが去ったという辛い時期を乗り越えて作られた傑作だったと思うのです。実際『SOUND OF LIES』は暗いマイナー調の曲が際立っているアルバムだったと思うし、『SMILE』はハッピーなアルバムですよね。そういう意味で『RAINY DAY MUSIC』は『HOLLYWOOD TOWN HALL』や『TOMORROW THE GREEN GRASS』のような、ジェイホークスのカラー、つまり曲調がよく出ていたと思うのです。実際、ファンは“これ”を待っていたと思ったのです。このレコードを聴いていると、あなたが“脱マーク”を果たして、自信に満ちあふれた曲作りをしたことが窺えるのですが、ご自身ではどのようにお考えですか?

「そうだね。確かに自分の曲に自信が持ててきたと言えると思う。君が言うように『SOUND OF LIES』は暗いムードがあったし、『SMILE』は奇妙なレコードでチャレンジ、実験したこともたくさんあった。マークとは一緒にツアーもしたし、曲もまた一緒に書いたから、まぁ、この辺のことはこの後の質問に含まれているだろうけれどさ(笑)。まぁ、そろそろ自分のソロを始めてもいいと思うし、そういう時期でもあると思ったんだ。『RAINY DAY MUSIC』を作るにあたり、自分達の原点に立ち返えろうと思ったし、実際満足のいくレコードだった。だからジェイホークスはもう終えようと決めたんだ。美しくそのキャリアを終えるのも悪くないだろ?」

●でも、日本の多くのファンがジェイホークスのコンサートを見たいと願っていましたよ。

「だから、これからはソロで活動していこうと思う。ゆっくりとマイペースでね。ソロならば日本や、オーストラリアへも行くチャンスがグッと増えるだろ? お金の面で安くすむわけだからさ(笑)」

●確かにそうですね! 期待します。それにしても『RAINY DAY MUSIC』以後、マークと再びタッグを組み、曲を作りツアーもしましたね。私達ファンはとても興奮を覚えたのですが、マークはあなたにとって共作者以外ではどのような存在なんですか?

「マークは面白い奴だし、本当にいい友達だよ。だから、いつでも曲作りやツアーをしたいと思っている。でも、バンドとして、常に一緒というのはもういいかなってね。長い時間一緒にやってきたわけだから。でも前回は限られた場所でしかツアーをしていないけれど、今後はバンドとともににツアーをしたいと思っているんだ。更にもう少し多くの都市でね。先日もマークはミネアポリスに遊びに来ていたんだけれど、一緒に酒など飲みながら喋り明かしてさ。楽しい時間を過ごせる親友だよ」

●最近はプロデュース業に精を出していますが、ティム・イーストンやサラ・リー・ガスリーのプロデュースはいかがでした?

「ティムのプロデュースは大変だった。彼は素晴らしいソングライターだし、個人的にも大好きだからプロデュースしたけれど、まだいろいろ問題もあって、僕がプロデュースした曲が使われることを願うけれど、どこまでそうなるか僕も分からないんだ。レーベルの“声”も汲まなきゃいけないしね。サラはキャリアを始めたばかりだけれど、楽しかったな。彼女とジョニー・アイリオンの音楽も好きだし、良いレコードを作れたんじゃないかな。次のアルバムもプロデュースすることになるはずさ」

●プロデュース業は、これからソロ活動を始めるあなたの音楽キャリアにどのような影響を与えると期待していますか?

「特に僕のキャリアに何かってことはないかもしれないけれど、たとえばジェイホークスはもう終わったわけだし、その過程で何か違うことをしたいと思ったんだ。プロデュース業もその一つ。これからは自分のソロ・キャリアを始めるとか、家族とゆっくり過ごすとか、プロデュースもするだろうしね。楽しいこと、いろいろなことに挑戦したいんだ。自分の可能性と言うか、どういうことが出来るかも見えてくるだろうし、そうした中でプロデュース業が何かいい影響を与えてくれれば嬉しいけれど、特に何かを“期待”はしていないよ」

●少し話が戻りますが、『RAINY DAY MUSIC』を作る前に3人編成でアコースティック・ツアーを敢行しましたよね。これの意図は何だったのですか?

「アコースティック・ツアーをしたのはレコードを作る前に特にすることもなく、『じゃ、やろうか』と言う感じだったんだ。実際やってみてよかったよ。シンプルであることの大切さも難しさもわかったし」

●マークが去ってから3人の新たなメンバーが加わりましたよね。しかし、また『RAINY DAY MUSIC』で3人へ戻った。なぜ3人編成を選んだのですか?

「3人のシンプルな編成に戻ったのは特に理由もなく、クレイグやジェシーは遠くに住んでいたし、常に一緒にいることは立地的に難しかったからさ。でも、クレイグやジェシーとの共作活動も楽しかったし、良い曲もたくさんあるよ。別にメンバーのいざこざが理由ではないさ。その後、スティーブンが加わったけれど、『RAINY DAY MUSIC』も基本は3人でスティーブンやイーサンがサポートとして参加している。その後、スティーブンも加わってツアーをした。素晴らしい、ジェイホークスを終えるには本当に素晴らしいツアーが出来た。最後のツアー、まぁ、また集まって演奏するかもしれないけれどさ、誰もそんなこと分からないけれど、とにかくツアーには満足したんだ。で、3人に戻った理由は、ミネアポリスに住んでいるのが3人だったから、だから3人に戻ったんだよね」

●なぜリプレイスメンツやハスカー・ドゥのようなバンドがパンク・ロック的アプローチ、つまりハードエッジを組み入れた演奏を試みていた時期、カントリー・ロック・テイストを組みこみ、ハーモニーを作り、美しい曲を演奏する方へ歩み寄ったのですか? そのほうが自分の世界観をより強く表現出来るとか、そのような理由はあったのですか?

「一つ言えることは、僕の声は高くて、ややハスキーだからパンク・ロックを演奏するにはそんなに適していなかったんだ(笑)。でもカントリーをやりたいとも思っていなかった。僕はパンク・ロックも好きだし、ニューヨークの音楽、LAの音楽といろいろ聴いていた。だからそれらを合わせた、良いところを組み合わせた独自の音楽をやろうとしていたんだ。リプレイスメンツもハスカー・ドゥもパンク寄りではあるけれど、まんまパンクではないだろ? ミネアポリスはそういう所だと思う。各バンドが自分らの好きな音楽の好きなエッセンスを取り入れ、自分たちの音楽として表現する。僕らもそのうちの一つであったんだ」

●オルタナティヴ・カントリーと呼ばれることにどのような思いがありますか?

「オルタナティヴ・カントリーはメディアが作り上げたものだし、そのシーンからつまらないバンドが数多く出てきたよね。同様に良いバンドもいるけれどさ」

●では、特に意味がないと?

「何の意味もないよ。本当に、意味のない言葉だ」

●ですよね。でも、そんなメディアからの評価、『RAINY DAY MUSIC』は評論家受けも良かったと思うのです。あなたのコメントを読んだのですが、「あなた自身が愛するレコードを作りたかった」と。で、実際作りましたよね。では、今のあなたのゴールは何ですか?

「さっきも言ったけれど、ソロ・キャリアを始めるんだ」

●もういつでも準備OKという感じですか?

「まぁ、もう“少し”というところかな(笑)。でも、今日のセイディーズや他にもいろいろ友達がいるけれど、そうしたアーティストのレコードに参加したり、プロデュースしたり、その中で自分の新たなキャリアを始めて、曲も作ったりね。やりたいことはたくさんあるし、とにかく自分の人生を楽しむため、いろいろやっていきたいね。ジェイホークスは終わったけれど、良いレコードを作って終わったんだから、そのキャリアには満足しているよ。だから、そろそろ次のステップを少しずつ踏んで行こうかなって思っている」

●ゴールデン・スモッグの新しいアルバムが完成したと聞いたのですが、ロスト・ハイウェイから出るんですよね。いつですか?

「4月に出る予定だよ。でも、あくまで予定だよ」

●ツアーなどは?


「ツアーもするつもりだけれどそこにジェフ、まぁ彼が一番忙しいと思うけれど、どれだけメンバーが揃うかは未定なんだよね」

●ゴールデン・スモッグは僕のような20〜30代にとってはトラヴェリング・ウィルベリーズのような存在だと思うんですよ。そんな存在になろうと思ったことはありますか(笑)? 元々、コンセプトはどのようなものだったのですか?

「(笑)そう言ってもらえて悪い気はしないけれど、元々、友達が集まってジャムったというのが事の始まりさ。とにかく楽しく音楽をプレイする。新作は今までのどのゴールデン・スモッグのアルバムとも違う、とてもユニークな出来だよ。たぶん驚くと思うよ。聴いてからのお楽しみだね。でもレコーディングはとても楽しいものだったし、ジェフも忙しい中、参加できたし、出来には非常に満足しているさ」

●なるほど。興奮しますね。あなたのソロもとても楽しみにしています。そして、日本へもぜひきてください。忙しい中、時間をとってもらいありがとうございました。

「うん、どうもありがとう」



(インタビュー◎山本尚 : 06年2月3日、トロントにて)




『RAINY DAY MUSIC』
THE JAYHAWKS
(LOST HIGHTWAY)



inserted by FC2 system