John DoeJOHN DOE interview

MY ENERGY COMES FROM
MY HEART AND MY HEAD















(C) Omer R. Cordell


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いつだって音楽を作る準備はできているんだ

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ニッターズのツアーでトロントを訪れたジョン・ドォとイグジーンにインタビュー。

ご存じのとおり、ジョン・ドォとは彼の本名ではない。

身元不明(多くは死体)、もしくは自分が誰なのかを何らかの理由で説明できない、分かる術がない男性のことを指して言う言葉だ(因みに女性の場合はジェーン・ドォ)。

そう考えると、Xとはこれまた何かについての例えで使われる文字であるため、この2つの因果関係はありそうだ。それについて、質問できず残念だった。

しかし、そんな名前で呼ばれている、または呼ばせている(というほうが正確か?)男だが、ジェントルマンであった。そして、物事をとてもはっきりと話してくれる男性であり、その人柄はリスペクトするに値した。

逆にイグジーンはイメージ通りであった。ウロチョロと控え室の出入りをくり返し、インタビューに参加してくれないのかと思いきや、途中、突然会話に加わってきた。



●メリーランドからLAに出てきた時はカントリー・シンガーを目指していたそうですね。

ジョン 「いいや、カントリー一本と言うより、ソングライターになりたかったのさ。俺は特別な何かになりたかった。ミュージック・シーンにおいてユニークな存在になりたかったのさ。76年にトーキング・ヘッズをCBGBで見たし、ハートブレイカーズを同じ76年にマックスズ・カンザス・シティーで見たんだ。パティー・スミスのレコードも持っていた。つまり何が起こり始めているかを知っていたのさ」

●イグジーンとあなた2人でリード・シンガーになるというのはとてもユニークな考えだと思うのですが、アイディアはどこから生まれたのですか?

ジョン 「愛だ(笑)。愛し合っていたから2人で一緒に歌いたかったのさ」

●イグジーンとはポエトリー・リーディングで初めて会ったそうですが、もちろんそこで彼女の作品を聞いたんですよね。どのように感じましたか?

ジョン 「よかったね。心を動かす何かがあったし、練られていた。(意味が)委ねられていて、捧げられていた。だから、とても興味深いものだった。彼女自身の人柄にも惹かれたよ。いくつかの詩は曲にしたんだ。たとえば“DELTA 88”や“I'M COMING OVER”がそうだ。彼女は詩を書くことを続けたし、完全な曲も書くようになった。メロディーはついていないのに、ちゃんとヴァース・パートやコーラス・パートを分けて書いていた。彼女はそういう人なんだ」

●Xの活動中にニッターズとしての活動も始めました。そもそもニッターズはどういう経緯で始まったんでしょうか?

ジョン 「イグジーンと、デイヴ(・アルヴィン)、そして俺はいろいろな問題に対してベネフィット・コンサートを開きたかった。ビリー・ズームとフィル・アルヴィンはこれに対して決して賛成しなかったのさ。奴らもいろいろ問題を抱えていたからね。だから俺達3人でデイヴの家のリヴィングに集まり、曲を作った。それがニッターズの始まりさ」

●99年にブラッドショット・レコードから出たニッターズのトリビュート盤『POOR LITTLE KNITTER ON THE ROAD』にニッターズとして未発表曲(新曲?)を提供していたけれど、今回、9年ぶりに新作を出して、ツアーを行なおうと思ったのは、なぜなんですか? なぜ“今”だったのでしょうか?


ジョン 「俺達はやっと長年の約束を果たせたのさ。俺達は3、4年間隔でウエスト・コーストをツアーしていたんだが、(そこで演奏していた曲を)レコーディングもするべきだと感じていた。そして、今回やっと俺達は『OK, YES』と言ったのさ」

●トリビュート盤を聴いて、どう思いましたか?

ジョン 「気に入ったよ。ウィスキータウンを除いてね。なぜなら最悪なヴァージョンだからさ。奴らは“SILVER WINGS”をカヴァーしたんだが、奴らは曲を何か違うものに変えようと試みた。実際違うものになったが、同時に最低だな。バンドとしては悪くないし、どちらかと言えば好きだが、あのカヴァーは最悪だね」

●では、好きなトラックは?

ジョン 「ケリー・ホーガンが良かったね。素晴らしい。それにロビー・ファルクス。彼ら2人のカヴァーは気に入ったよ」

●04年9月にXはラモーンズの30周年記念ライヴに出演しました。Xを始めた頃、あるいは活動中、ラモーンズからインスピレーションを受けたことはありますか? 同じアメリカのパンク・バンドとして彼らにシンパシーを感じていたんでしょうか?

ジョン 「そうだと思う。俺らは長い間インスピレーションを受け続けている。初めて聴いた時から今までずっとね。もう彼らは演奏しなくなったが、インスピレーションは受け続けている。30周年のライヴの日、俺達は最高のパフォーマンスを見せたかった。なぜなら他のみんなも最高だったからね。俺達も彼ら同様にいいものをやりたかった。その日は特にラモーンズというわけでもなく、出演した全てのバンドからインスピレーションを受けたね」

●ラモーンズと競うという気持ちはあったのですか?


ジョン 「特にそういう気持ちはなかったけれど、でも、特にジョニーが亡くなってから気持ちが一致したような感覚を持ったよ。ロブ・ゾンビが言っていたけれど、ライヴ後、彼がジョニーに電話したんだ。その時、ロブの周りにはいろいろな奴らがいたらしんだが、みんなで『YEAH, WE LOVE YOU!!』って伝えた数日後、ジョニーは亡くなったんだ」

●Xの最新ライヴ・アルバム『LIVE IN LOS ANGELS』に賛辞を寄せていたレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー他、現在活躍している多くのミュージシャンがXの影響を口にしています。Xはロック・シーンにどんな影響を与えたとご自分達では考えていますか?

ジョン 「俺達は2つのことをやったんだ。一つはパンク・ロックとイグジーンのハーモニーを組み合わせた。そこから多くのミュージシャンが何かを学んだと考えているよ。そして、ビリー・ズームのロカビリーの影響を受けたギター・プレイをパンク・ロックと組み合わせた。たぶん、詩として優れた歌詞も人々の目を惹きつけたんだろう。もちろん、そういうことをやったミュージシャンは他にもたくさんいるよ。たとえば、リチャード・ヘルがそうだ。たぶんブロンディもそうだけれど、彼らはもっとポップ・アートっぽいね。まぁ、つまり、もし誰かに影響を与えているのなら、嬉しい限りさ。俺の人生は悪くないことなるし、視点も失っていなかったということになる(笑)。誰かが影響を受けて、それを違う次元へ引き上げてくれる。最も素晴らしいことだと思う。たとえば、オールド97'sやジュリアナ・ハットフィールド、エイミー・マンが君に影響を与える。君が彼らからインスピレーションを得る。これがサイクルとして回っていくことになるのさ。最高だよ」

●ライヴ・アルバムとライヴDVDは出ましたが、Xとして新作を出す予定は? ニッターズの新作でもXの曲を改めて取り上げていましたが、今後、2人がXとして新曲を作ることはないということなのでしょうか?

ジョン 「新しいXのレコードを作るとは思わないな。そんなことはあり得ないね。でも、ニッターズなどの活動を通して、イグジーンと新しい曲を作るっていうのは起こり得ることだ(注:ジョンの最新ソロ『FOREVER HASN'T HAPPENED YET』にはジョンとイグジーンが共作した“HWY.5”が収録されている)。でも、彼女にはオリジナル・シナーズもあるし……」

イグジーン 「全て作業は終わったわよ。だから新しい曲を書く時間はあるわよ」

●作業が終わったというのは、オリジナル・シナーズの新作のことですか?

イグジーン 「そうよ、全ての作業は終わったの。ナイトロから1月に発売予定よ」

●2人にとってカントリーの魅力は?

ジョン 「カントリーは正直でメロディーがよく、歌が短い」

イグジーン 「ユーモア感覚ね。いつも悲しさと同時におかしさもあるところだわ。“SAD AND FUNNY SAD AND FUNNY SAD AND FUNNY”(と口ずさむ)」

●メンバーそれぞれのソロ活動に加え、Xのツアー、そしてニッターズ。現在はこれまでにないほど精力的に活動していますね。それだけ精力的に活動する何かきっかけがあったんですか?

ジョン 「いや、特にきっかけとかはなかったよ。いつだって音楽を作る準備はできているのさ。俺のエネルギーというものは、俺の心と頭から生まれるものだから、理由みたいなものは特にないんだよ」

●『FOREVER HASN'T HAPPENED YET』収録の「MAMA DON'T」でデュエットしていたお嬢さん、ヴェロニカ・ジェーンさんは絶対シンガーになるべきだと思うのですが、彼女にその気はないのでしょうか?

ジョン 「まさか!! もし彼女がその道を選ぶなら、俺も手伝うけれど、彼女はまだ17歳なんだ。だから、俺は彼女がそういうことを考えるのを遅らせるようにしているのさ。日本ではそうなんだろうけれど、アメリカじゃ親が子供に『何になりたいんだ、何をしたいんだ!?』と圧力をかけるようなことはしないんだ。だって、ただの子供だぜ! でも、彼女は歌ったし、いい歌を聴かせてくれた。彼女は俺を含む誰よりも早くレコーディングを終わらせてしまったのさ。彼女は誰よりもうまく、早いのさ。それには俺もちょっとビビらされたけどね(笑)」



(インタビュー◎山本尚 : 05年8月、トロントにて)




『FOREVER HASN'T
HAPPENED YET』
JOHN DOE
(YEP ROC)



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