THE MUFFS interview

I'M REALLY REALLY GLAD AND REALLY REALLY REALLY HAPPY AND I'M FEELING GOOD

The Muffs

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00年に参加したワープト・ツアーは最悪だった。
それが活動休止の最大の理由かもしれない(笑)


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 00年以来、活動を休止していたキム・シャタック(ヴォーカル&ギター)率いるLAのガレージ・パワー・ポップ・トリオ、ザ・マフスが、ついに復活! オリジナル・アルバムとしては実に5年ぶり、しかし、いい意味で何も変わっていない最新作『リアリィ・リアリィ・ハッピー』を昨年(04年)7月に発表。そして、同年10月〜11月には99年以来となる再来日公演まで実現させた。 

 その来日公演には多くのファンが詰めかけ、日本におけるマフスの根強い人気と、にわかには10年選手とは思えない、衝動をそのまま叩きつけたワイルドな演奏に改めて圧倒されてしまった。このインタビューはその来日ツアー中、ストリート・ファッション誌Ollie用に筆者が行なったものである。今回、編集部のご好意で、その全てをここで発表できることになった。感謝!

 キムの言葉からはこれまで背負ってきたものから解き放たれ、心からバンド活動を楽しんでいるさまが読み取れるはずだ。



●ジャパン・ツアーは楽しんでいますか?

「もちろん! 日本は大好きだもの」

●5年ぶりの来日ですけど、日本にマフスのファンはまだいるんだろうかと不安になったりはしませんでしたか?

「いいえ、全然気にしていなかったわ。ただ、日本に行って、楽しめればいいと思っていただけよ。私達、たとえ観客が1人でも楽しめるのよ(笑)。だって、まず何よりも自分達が楽しむことが大切でしょ」

●アメリカと日本のファンって違いますか?

「そうね。日本のファンって曲と曲の間、あまり喋ったりしないわね。曲が終わると、拍手があって突然シーンとなる(笑)。最初は、私達に関心がないのかなって不安だったけど、それに慣れれば、日本のファンはむしろ熱狂的だってことが理解できた。今は全然、やりやすいわよ。日本のファンはポップ・ミュージックが大好きよね。だから、私達の演奏にもストレートに反応してくれる。それと比べると、アメリカのファンは賑やかすぎる(笑)。もちろん、そういう人達ばかりじゃないけど、ライヴを見にきているにもかかわらず、中には私達がやっていることに無関心って人もいるのよ」

●まず何よりも自分達が楽しむことが大切ということは、つまり、どんなファンを前にしてもマフスとしてやることに変わりはない、と?

「そうね。それでお客さんに気に入ってもらえれば、言うことはないわ」

●今回の来日公演を見て、日本にも根強いマフス・ファンがいることを改めて知りました。ここ日本で、自分達のどんなところが、そこまで支持されていると思いますか?

「えー、わからないわよ(笑)。想像もつかない。多分、マフスはいい曲を書いているから?(笑) それにライヴもエネルギッシュでしょ。それが、ある人達にはウケているんじゃない?」

●ところで、00年にドラムのロイ(・マクドナルド)がバンドを抜けたため、マフスは活動を休止しました。その後、02年にそのロイが戻ってきて、活動を再開した。一体、何があったんですか?

「確かにロイは00年に一度、バンドを辞めたんだけど、その3ヵ月後には戻ってきたのよ。実は彼、バンドを辞めたとたん、辞めたことを後悔したらしいの(笑)。私達、ロイには戻ってきてほしいと思っていたから、それじゃと思って、ロイにファンレターを送りつけて、彼にもっと後悔させたのよ(笑)。その夏のワープト・ツアーは結局、ジム(・ラスピーサ)に叩いてもらったんだけど、その頃にはロイはもうバンドに戻るって決めていたのよ。ただ、その後、しばらくライヴを休むことになったんだけど、私達としてはちょっとしたシエスタのつもりだったのよ(笑)」

●そのシエスタは、マフスとして10年近く活動してきて、自分達がやっていることが新鮮に感じられなくなったということも関係あるのではないですか?

「確かに、それもあったかもしれないわね。ずっとこういう生活を続けてきたために精神的に疲れていた。そういう言い方はできるかもしれない。ただ、休んでいる間もずっと曲は書きつづけていたのよ。ペースはそんなに早くなかったけど、まぁ、だからこそシエスタが長引いちゃったんだけど。それに結婚したり、引っ越ししたり、私の私生活にも変化があったから、休むにはいいタイミングだったのよ」

●その頃、リサ・マー・エクスペリメントのリサ(・マー)とシェリー(・ソリンガー)とベアーズ(THE BEARDS)ってバンドで活動していたけど、マフスを休んでいる間に書いた曲は、そのベアーズ唯一のアルバム『FUNTOWN』ではやってはいないんですか?

「1曲、“MY PILLOW”ってマフス用に書いた曲を持っていったわ。それと“BIG DUMB WOLRD”って曲は、マフスで似たような曲をやっていたんで、敢えてこれはマフス向きではないと外して、ベアーズに持っていったんだけど、リサとシェリーが、なんでこんなにいい曲をマフスでやらないの? と驚いていたわ(笑)。もう1曲“1000 YEARS”を提供しているんだけど、それはずいぶん前にマフスでロイとロニー(・バーネット/ベース)に拒否された曲よ」

●マフスを再開したとき、バンドに取り組む気持ちに変化はありましたか?

「うん、かなり変化はあったわ。一番の違いは、休止する直前はバンドの中ではけっこう緊張が高まっていたんだけど、その緊張がとけて、バンドをやっていることが素直に楽しめるようになったことね。こうでなければいけないとか、こうしなければいけないとかいった強迫観念がなくなって、自分達のやりたいようにやればいいと思えるようになった。新作は、まさにそういう状況で作ったのよ。それはとてもよかったわ」

●マフスのイメージに自分達が縛られているようなところがあったんですか?

「と言うよりは、元々、私って完璧主義者で、バンドを休止する前は、全てが自分の思いどおりにならないと納得できなかったのよ。そうやって自分で自分を追いこんでいたのね。それが休んだあとでは180度変わって、考えていたこととちょっと違うんじゃないかって方向に進んでも、それはそれでいいと思えるようになった。自分が失敗しても、それを笑い飛ばせるようになった。自分がやっていることを、ある程度、客観視できるようになったってことかもしれないわね」

●ところで、そもそもマフスを結成したときは、どんなバンドをやろうと考えていたんですか?

「今でも変わらないけど……まぁ、今は昔ほどギターをギャンギャン鳴らしたりはしないけど、マフスを始めた頃は一言で言えば、メロディーとラウドなギター・サウンドを組み合わせたいと考えていたわ」

●メロディーとラウドなギター・サウンドそれぞれの部分で影響を受けたバンドと言うと?

「そうね、まずピクシーズでしょ、ビートルズでしょ。それにキンクス、エルヴィス・コステロ。ブロンディ。20年代〜40年代のスウィング・ジャズにも影響を受けたわ。素晴らしいメロディーだったら何でもね(笑)。Xとか、ラモーンズとか、コーゴーズとか」

●80年代のLAのパンク・シーンの影響は受けていますか? 音楽性に限らず、たとえば当時のシーンが持っていたエネルギーや何か新しいことをやろうという意識とか。

「影響を受けたとは思っていないわ。自分達のシーンは、とにかく自分達と周りの友人達だけで作ってきたものだもの。常に自分達にできることをやるってスタンスでやり続けてきた。だからこそ長続きできたんじゃないかしら。私達のショーに来るお客さんって実は老若男女、幅が広いのよ。パンクスもいれば、ビートルズ・フリークもいれば、ヒッピーもいる。それが私達の強みね」

●つまり1つのシーンやブームと一緒に出てきたわけではなく、あくまでもインディペンデントでやってきた、と?

「そうね。もちろん、私達が活動を始めたあと、グランジ・ブームが起きたわけだけど、その恩恵を受けていないとは言わないわよ。ただ、ブームとはある程度、距離を置いていたからこそ、ここまでやって来られたんだとは思うわ」

●マフスと同じ頃、メジャー・デビューしたグリーン・デイがビッグになったようにマフスにもそのチャンスってあったと思うんですけど。

「う〜ん、それについては特に思うことはないけど……。そういうことって、やっぱりタイミングもあるでしょ。もちろん、グリーン・デイもいい曲を書いている、いいバンドよ。でも、彼らも私達と同じように成功したいとか、金持ちになりたいとか考えていたわけではないと思うのよ。そう考えると、彼らはたまたまタイミング的についていたってことじゃないかしらね」

●グリーン・デイの大成功以降、パンク・ブームが起きて、ポップ・パンクがメインストリーム化したけど、現在のパンク・シーンについては、どう思いますか?

「今のポップ・パンク・バンドにはメロディーもラウドなギター・サウンドもあるけど、でも、それは私が好きなものではない。まず、何よりもソングライティングが物足りない。全然のめりこめないわ」

●じゃあ、逆にキムが今、いいと思っている現在のバンドって?

「オブ・モントリオールは。とてもクリエイティヴだと思うわ。それに再結成ピクシーズ。ウィーザーも曲によってはいいわね。メタルっぽい曲は好きじゃないけど、ポップな曲はいいわ。グリーン・デイの新作も好きよ。シアトルのヴィスクイーン(VISQUEEN)もいいバンドよ。ファストバックスのキムがベースを弾いているのよ(※注:その後、キムは脱退。現在はマフスのロニーが助っ人として参加している)。LAのジ・エイティー・エイト(THE 88)もいいわね。最近見た中では一番好きかもしれない」

●さっきワープト・ツアーに参加したと言っていたけど、その調子では、あまり楽しめなかったんじゃないですか?

「うん、全然(笑)。最悪だった。ルナチックスとグリーン・デイとドナスは良かったけど。ひょっとしたら、ワープト・ツアーに参加したことがバンドを休んだ最大の理由かもしれないわ(笑)」

●では、最後に今後、どんなふうに活動を続けていきたいですか?

「日本に来て興奮しているってこともあるんだけど、いろいろなことをしたくてたまらないのよ。お蔭で、ロイとロニーとは言い合いになっちゃうんだけどね(笑)。彼ら2人はライヴ・アルバムを出したいと言っているんだけど、私としてはスタジオ・アルバムを出したいの。でも、そんなことしてたら、06年になっちゃうって。だから、すぐにライヴ・アルバムを出そうって。でも、新曲はもう、たくさんあるのよね」

●そうですか。新作を作ったら、ぜひ、また日本に来てください。

「新作を出さなくたって、いつでも日本には来たいわ(笑)」


(インタビュー◎山口智男)





『REALLY REALLY HAPPY 』
THE MUFFS
(P-VINE)




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