SON VOLT interview

ROCK AND ROLL AROUND MY HEAD ALIVE AND KICKING


(c) ヤマジユカ



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ロックンロールのエッセンスを持っている
ホワイト・ストライプスのようなバンドにはすごく共感できるんだ

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今年3月に実現した、まさかのサン・ヴォルト初来日公演は本当に素晴らしかった!

05年3月のSXSWで新生サン・ヴォルトのライヴを見ていたので、一瞬、来日公演はパスしてもいいかとも思ったけれど、見にいってよかった。なぜって、来日公演ばSXSWのライヴよりも何倍もよかったからだ。

かつて確実にアメリカン・ロックの希望だったその雄姿を一目見ようと集まった根強いファンの期待に応えるようにジェイ・ファラー率いるサン・ヴォルトは2時間の熱演を披露。これと言った見せ場があるわけではないものの、手堅い演奏と、ジェイの鼻にかかった歌声が紡ぎだすメロディーの味わい深さが観客の心を鷲掴みにして、一瞬たりとも離さない。

それはまさにハイプに頼らず、自分達の足でしっかりとキャリアを築きあげてきたバンドだけが持つことができる底力だった(こういうバンドが活躍しているかぎり、アメリカの大地にしっかりと根を張ったロックに飽きることはないだろう)。

ライヴの前日、ジェイに話を聞くことができた。

予想通り自分の考えを雄弁に語るというタイプではなかったけれど、サン・ヴォルトを含む音楽活動への情熱はしっかりと伝わってきた。



●まず、しばらくソロとして活動していたジェイが04年にサン・ヴォルトとして再び活動を始めたいきさつを教えてください。

「ただ、エレキの音とバンドが恋しくなっただけだよ。それにタイミングもちょうどいいと思ったんだ」

●ソロ・ツアーではキャニオンがバック・バンドを務めていたけど、彼らとでは満足できなかったということですか?

「いや、彼らとツアーしたことがきっかけで、やっぱりバンドっていいなって思うようになったんだよ。彼らとのツアーは素晴らしい経験だったけど、キャニオンは僕のバンドじゃない。それで、自分のバンドがやりたいと思ったんだ。とは言え、今、サン・ヴォルトでドラムを叩いているデイヴ・ブライソンと、キーボードのデリック・デボーハーは、キャニオンのメンバーなんだけどね」

●現在のツアーではギターは誰がプレイしているんですか?

「ブラッド・ライスだよ」

●え、そうなんですか!? 05年のSXSWにサン・ヴォルトとして出演したときは、ブラッド・ライスは参加してませんでしたよね。

「そうだね。ブラッドはティフト・メリットとツアーしていたからね。その時、ギターを弾いていたジェイムス・ウォルボーンってイギリス人のギタリストは今、セント・エティエンヌでキーボードをプレイしているよ(笑)」

●じゃあ、ブラッドがサン・ヴォルトのパーマネント・メンバーと考えてもいいんですか?

「ブラッドは今年の1月からずっと参加しているんだ。そうだね。そう考えてもらっていいよ」

●へえ、ブラッド・ライスですか。日本のファンはきっとエキサイトすると思いますよ。

「ああ、僕達も彼とプレイできて、とてもエキサイトしているよ(笑)。彼のプレイは、見たことある?」

●以前、ライアン・アダムスとテレビ番組で演奏しているところを見たことがあります。ところで、オリジナル・メンバーでの再結成は考えなかったんですか?

「もちろん考えたよ。実際、声もかけたんだけど、断られちゃってね(笑)。でも、4、5年も間が空いちゃったからさ。メンバーそれぞれにやりたいことがあって実現できなかったんだ。それはしかたがないね」

●そもそもソロ活動を始めたとき、サン・ヴォルトはこれで一旦解散だと考えていたんですか?

「いや、ちょっと休みを取ろうと思っただけだよ。実際、最初のソロ・アルバムをレコーディングしたあと、オリジナル・メンバーでブルース・スプリングスティーンのトリビュート・アルバムに参加したしね。結果的に長い間、休むことになってしまったけど、僕自身はまたいつかサン・ヴォルトをやろうと思ってた。でも、他のメンバーは待ちきれなかったみたいだね(笑)。結局、アレハンドロ・エスコヴェードのベネフィット・アルバムがオリジナル・メンバー最後のレコーディングになったんだけど、最後にそういう作品に参加できてよかったと思うよ」

●サン・ヴォルトでできることはやり尽くしたと考え、休止しようと思ったんですか?

「そうだね。何か他のことにチャレンジしたかったんだ。そのままバンドを続けても過去の焼き直しになることはわかってた。それだけはイヤだったんだ。あの時、僕にはソングライティングはもちろん、サウンド作りやレコーディング方法について、いろいろなアイディアがあった。でも、バンドにいると……他のバンドのことはわからないけど、当時、サン・ヴォルトは何かやるときは全員で話し合って決めなきゃいけなかったんだ。だけど、ソロなら何でもやりたいようにできるだろ?」

●バック・バンドを従えるのと、バンドの一員として活動するのとでは、何か違いはありますか?

「ソロ活動では、いろいろ学ぶことができたと思う。今はメンバーの一人ってことで、他のメンバーが持ちこむそれぞれのバックグラウンドやヒストリーを混ぜ合わせるような感覚はあるね」

●サン・ヴォルトを休止して、ソロ活動を始めたときと同じようにアンクル・テュペロを辞めてサン・ヴォルトを結成したときも、きっとジェイなりに理由があったと思うんですけど、あまりにも唐突すぎて、「ジェイ・ファラーって気紛れな人間だ」と考えているファンも少なくないようですよ。

「フフフ。確かに状況は似ているかもしれないけど、アンクル・テュペロとサン・ヴォルトでは事情は全然違うんだよ。アンクル・テュペロの場合は、バンドにいた2人のソングライター、つまりジェフと僕がソングライターとしても人間としても成長した結果、1つのバンドを続けていくことはできなくなってしまったんだ。だけど、サン・ヴォルトの場合は、さっきも言ったように、ただブレイクを取りたかっただけなんだよ。僕の中では全然別のことなんだよね。もちろん、ファンの言いたいこともわかるよ。僕だってビル・ワイマンがストーンズを辞めたときは、なんだよって思ったからね(笑)。でも、僕はミュージシャンとして、常にクリエイティヴなことに挑戦しつづけたいんだ」

●ところで、アンクル・テュペロがロック・シーンに新しいムーヴメントを起こすきっかけを作ったという自負はありますか?

「いや、全然ない。結果的にムーヴメントは起こったかもしれないけど、僕達が起こしたわけじゃない。僕達はやりたいことをやってただけさ。それがたまたまオルタナ・カントリーって新しいレッテルを貼られて、話題になったってだけのことだよ。それに僕達が新しい音楽をやってたとも思わないよ。だって、80年代に同じような音楽をすでにジェイソン&ザ・スコーチャーズとかアレハンドロ・エスコヴェードのトゥルー・ビリーヴァーズがやってたからね。だから、そんなふうに言われると、むしろ困惑しちゃうんだ」

●ウィスキータウン、オールド97's、ブルー・マウンテンといった連中と仲間意識なんてあったんですか?

「ブルー・マウンテンのメンバーとは一緒にツアーしたとき、いろいろ語りあって、お互いにビッグ・スターが大好きってところで意気投合したんだ。ビッグ・スターって全然カントリーじゃないにもかかわらずね(笑)。だから、確かに仲間意識みたいなものはあったよ。だけど、他の連中は、よく知らないんだよね」

●ソロ時代にやっていた「6ストリングス・ビリーフ」を、『メロディ・オブ・ライオット』で再演したことには大きな意味があったんじゃないでしょうか?

「まさにそうだね。あの曲を作った当時、ロックンロールはもう死んだなんて言われてたんだけど、それに対して、『そんなことはない。ロックンロールは決して死んだりしない!』って気持ちがあったんだよ」

●サビの「俺の中でロックンロールが生きつづけている」って歌詞がグッと来ますね。ヒット・チャートの上ではロックは力を失っているように見えるけど、ライヴ・シーンにおいては近年、ロックはむしろ活況を呈しているのではないですか?


「そう思う。チャートなんてクソ食らえさ(笑)。確かにライヴ・シーンにはいいバンドが多い。ベーシックな形でロックをやってるホワイト・ストライプスのようなバンドが注目されるのは、すごくいいことだと思うね。彼らはロックンロールのエッセンスを持ってるよ。そういう部分ですごく共感できるんだ」

●『メロディ・オブ・ライオット』は現代社会に言及した曲が多いと思いました。それは曲を作るときのジェイの視点が変わったってことでしょうか? それとも、そういう曲を作らなきゃいけない世の中になってしまったということでしょうか?

「両方だよね、やっぱり。確かに視点も変わってきたと思う。だけど、大統領選挙があった04年のアメリカは最悪だった。それに対して、何か言わずにはいられないって気持ちも確かにあったからね」



(インタビュー◎山口智男)
※このインタビューはクロスビート06年7月号掲載のインタビューを再構成の上、転載したものです。
 クロスビート編集部のご協力に感謝!!




『OKEMAH AND
THE MELODY OF RIOT』
SON VOLT
(BMG JAPAN)



■■■ Live Review : 05年10月5日 オペラ・ハウス(トロント) ■■■

このバンドはサン・ヴォルトと呼ばれているが……

文◎山本尚


新作『メロディ・オブ・ライオット』は、シンプルなアメリカン・ロックである。小細工がなく、オーヴァードライブの効いたギター・サウンドとジェイの声、歌詞から素直に反応したバンドの演奏から、ジェイ・ファラーが何故サン・ヴォルトを再び始動したのか、その理由が明確に伝わるアルバムだった。

彼のソロ・アルバムで多用された、リヴァーヴ・サウンドや実験性は影を潜めた。このシンプルさは原点回帰と言えた。ジェイ以外の3人は新メンバーにもかかわらず、サン・ヴォルトのアルバム、つまりバンドのアルバムと呼べるものであった。しかしライブを見る限り、考えを改める必要がある。

「フー」で幕を開けたコンサートに詰めかけたオーディエンスは、ざっと見ても750人以上。ソールド・アウトであった。昨年のジェイのソロ・コンサート時は、今回よりも狭い開場で、客もまばらな2、300人程度だったと記憶する。それくらいこのサン・ヴォルトの再結成をファンは心待ちにしていたのだ。実際ジェイもサン・ヴォルトという名前は「マーケティングのため」とインタビューで答えていたことを考えると、ソロ・ツアーの開場で再結成を懇願するファンの声を聞いたのかもしれない。

サン・ヴォルトとしてライブを行ない、たくさんのファンが詰めかけたのだからジェイの目論見は正解だった。しかしバンドとしてがっぷり四つに組んでいたアルバムだったにもかかわらず、ライブでは“ジェイ&ヒズ・バンド”、つまりサン・ヴォルトとしてステージには居なかった。演奏中にメンバーとのアイ・コンタクトや会話もなければ、笑顔もない。意思疎通は希薄と言えた。曲ごとにギターを持ち替えるジェイを見つめるメンバーは、どこかサポート・メンバーに見えて仕方がない。関係図は対等ではなく、無口な男の2歩後ろに居るメンバーで構成されているバンドが、新生サン・ヴォルトなのだ。

ウィルコのジェフはバンドとの駆け引き、ソロ・バトル、バンドとのアンサンブルを演奏中に大切にしている。ライヴ中のアクシデントから生まれる、思いもよらないコントラストを生み出そうとバンドの指揮を取り、自由な空間があり、生まれてくるものに喜びを感じていることが窺える。

しかしジェイはリハーサル通りの演奏を心がけているように見えた。だからライヴは視覚的に物足りないものであり、その物足りなさは聴覚にも影響を及ぼし、爆音にもかかわらずどこか軽く、体を揺さぶられる要素が少なかった。結局一番盛り上がったのがアンコールの1曲目、「ウィンドフォール」だったことも寂しい。

このバンドはサン・ヴォルトと呼ばれているが、その中身は別にサン・ヴォルトと呼ぶ必然性がないバンドだ。顎鬚を蓄えた男が放つ異様な緊張感がステージに張り詰めており、この特異さが音にも影響を及ぼしていた。

シンガー・ソングライターとしてアメリカの良心を歌いあげたジェイ・ファラー。あの詩的にもサウンド的にもストレートなアルバムは称えよう。しかしバンドのリーダーとしては足りないものがある。

解散、ソロ、再結成とメンバー・チェンジをくり返すジェイ・ファラー。より多くの人に音楽を聴いてもらうためとは言え、釈然としない。
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