TIM EASTON interview
I WANNA HEAR NOBODY TALKING ABOUT HOCKEY GAME AND SHIT (c)LAST HURRAH
SXSW2006では女性フィドル奏者とデュエットも披露
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(新作を作るとき)一人で旅行でもしながらツアーをしたいと思ったんだよね。 ギターを持ってぶらりとね。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)を知っている人にとってはこのNXNE(ノース・バイ・ノースイースト)はこぢんまりしすぎているかもしれない。町中はもちろん、空港ターミナルまで世界中から集まるミュージック・ラヴァー達を迎え入れるオースチンとはとにかく大きく違うのだ。そんなフェスティバル、NXNEではあるが、トロントニアンは楽しみにしている。 トロントにふらっと立ち寄ったら、たまたまフェスティバルが行なわれているから演奏しに来たような風貌で現れたティム・イーストンは、このフェスティバルの意義、つまり知らないアーティストを発見する場というコンセプトにマッチした。アコースティック・ギター、ハーモニカ、足で刻むリズム(「俺のバンド(笑)」と呼んでいた)、そしてしゃがれた声だけでスタンリー・カップに沸き立つ一部オーディエンスの視線をテレビから奪い取り、気づけばその歓声はティムへ向かっていた。 持ち物は手提げバッグにギター。バッグにはCDがたったの10枚。 その10枚はライヴ後あっという間に売りきれた。売上金200ドルを持ってまた旅に出て、曲を書く。 ローリング・ストーンズがSXSWだとしたらティムはNXNE。注目度はそれほどだが、人々を興奮させる術を知っている。 ●おつかれさまです。とてもいいライヴでしたよ。 「ありがとう」 ●ステージでポリティカルなこと以外にも新作には多く含まれていると言っていましたが、それでも大統領選挙はさぞがっかりしたでしょね。 「そりゃーね」 ●歌い続ける、訴えかけるしかないという感じですか? 「それが俺の仕事だからね」 ●なるほど。早速ですけれどね。去年あなたに話を聞いたとき、新作はゲイリー・ルーリス(元ジェイホークス)がプロデュースすると言っていましたが、ゲイリーとのセッションは3曲しか収録されませんでしたね。一体何があったんですか? 「えっ!(と驚いた表情で) いや、簡単に言うとホームタウン(カリフォルニア州ヨシュア・トゥリー)で作業したいと感じたんだよ。ミネアポリスでのセッションに100%満足できなかったからなんだよね。ゲイリーは最高だよ。尊敬するミュージシャンさ。ただ、ホームタウンで作業したくなったんだよ。友達もいるしさ」 ●この前、ゲイリーにインタビューする機会があったんです。その時、彼は「ティムのレコーディングはとても難しかった」ということを言っていたんです。 「(彼が? という驚いた顔をして)ゲイリーが悪いわけじゃないさ。俺が悪いの」 ●過去2作品はバンドでのアルバムでしたが、新作はよりフォーキーなスタイルですよね? バンドの存在に疲れてしまったんですか? 「いやいや。でも、ツアーのことを考えたときに、一人で旅行でもしながらツアーをしたいと思ったんだよね。ギターを持ってぶらりとツアーってね」 ●ということは、アルバムを作る前と作り始めてからではアイディア、考えが完全に変わったということですよね? なぜホームタウンにこだわったのですか? 「ゲイリー達とレコーディングしている過程で『ちょっと待てよ、俺は正しい方向へ進んでいるのか? 俺がやりたいことって何だ?』っていう疑問を感じたのさ。だから頭をクリアにするためにも、家に帰ってリラックスしたかったんだよね」 ●ニュー・ウエスト(ティムが所属しているレーベル)はミネアポリス・セッションについてどのようなコメントをくれました? 「奴らはとても気に入っていたよ。ゲイリーとの3曲も気に入っていたしね。ただ、俺の言い分、ホームタウンでリラックスしながら作業をしたいというのも受け入れてくれた。さらに俺は1週間200ドルっていうレコーディング・ハウスを借りられたんだ。1ヶ月でも800ドル。決して高くないよね。そこへ全ての荷物を運びいれ、マーク・ハワード(プロデューサー)と作業を進めていったんだ。ゲイリーはとにかく最高だよ。ただ俺が考えを変えただけさ」 ●なるほど。ところで今日のライヴを見て、改めてディランからの影響を強く感じたのですが、好きなギタリストは誰ですか? 「ギタリスト!? ロックンロールだと……難しいな〜。カール・パーキンスだろ。フォーク・ミュージックだとドック・ワトソンかな。アレックス・チルトンのギター・プレイも興味深いよね。リチャード・トンプソンも最高のギタリストだよね。たくさんいるよ」 ●ブリティッシュ・ミュージックにも強い影響を受けていますよね? 「もちろん」 ●70年代はどうなんですか? 「70年代? あ〜、たぶんクラッシュが出てくるまではそんなにかな」 ●フェアポート・コンヴェンションなどのブリティッシュ・トラディショナル・フォークまではよく聴いた? 「うん。リチャード&リンダは最高だし、ライヴを見たいよ。未だにいろいろ研究と言うか、聴きこんでいるところだよ。俺はビートルズ・フリークだし、ストーンズやキンクスも大好きだ。ミシシッピ・ジョン・ハートのフィンガー・ピッキングはとても勉強になるしね。この辺のブルースに注目したのもストーンズのおかげかもしれないな」 ●では、70年代の北米ロックはどうですか? 「うん、聴いたね。ジョン・プラインとか……たくさんいるよね。そうそう、ジャクソン・ブラウンに影響受けているだろ? って言われるんだけれど、レコードは持っているけれど特別大好きってことはないんだよね。サイモン&ガーファンクルは未だにたまに聴くんだけれどね(笑)」 ●当時、デヴィッド・ゲフィンがアサイラム・レコードを始め、多くのシンガー・ソングライターが紹介されましたよね。そして、ミュージシャン同士が仲間で、ある種のコミュニティーが形成されていたと思うのです。最近のニュー・ウエストを初め、ロスト・ハイウェイ、イェップ・ロックなどの動き、結びつきは当時のリヴァイヴァル的なものなんでしょうか? 「決定的な違いはアサイラムは新しいアーティストを世に送り出した。全く知られていない、本当の新人ね。ニュー・ウエストは……違うよね。奴らは試みているかもしれないが、俺は新人ではないしね(笑)。でも、コミュニティーという意味では近いものがあるかもしれないし、最高だよ。似たテイストを持ったアーティストが集まっているし、影響もしあっている。もちろんリスペクトもしているしね。言っていいかわからないけれど、スティーヴ・アールが新たにレーベルに加わるよ」 ●ニュー・ウエストとの関係に満足している、と? 「うん、もちろん。みんないるし、ミュージック・ファンもたくさんいるしね。みんな一緒にいることに満足し、とても居心地のいいレーベルだよ」 ●最後に最近の音楽シーンについて一言。 「俺が思うに真のロック・バンドは2つ。ウィルコとレディオヘッドじゃないかな。つまり、奴らはロックを進化させている。彼らはプログレッシヴ・ロックと呼ばれるべきだよ。俺は別に新しいことをしているわけではないけどさ(笑)。奴らは最高だよ」 ●スフィアン・スティーヴンスも好きなんじゃないですか? 「いいね〜、奴はいいね!」 (インタビュー◎山本尚:06年6月10日、トロントにて) |
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