HEAVY CREAM


暖房が何もないところでレコーディングしたんだけど、
それがたまたまその冬で一番寒い2日間だったのよ!



もちろん、今に始まったことではない。しかし、この数年、以前にも増しておもしろくなってきたナッシュヴィル・シーン。

聞けば、メジャー・レーベルもスカウトを派遣しているという。

カントリーの聖地というイメージも今は昔。現在のナッシュヴィル・シーンでは、さまざまなバンドが活躍している。そう言えば、ジャック・ホワイトのサードマン・レコードもナッシュヴィルに移ってきた。

そんなナッシュヴィル・シーンに注目している中で出会ったバンドがヘヴィー・クリームだ。

女の子3人と野郎1人からなる4人組。

ナッシュヴィルの注目デュオ、ジェフ・ザ・ブラザーフッドが運営しているレーベル、インフィニティー・キャットのホームページで彼女達のデビュー・アルバム『DANNY』のジャケットを見た瞬間、何とも言えないそのセンスにヤラれてしまった。

強烈な予感があった。

早速、購入してみたところ、予感は的中。「ジョーイ・ラモーンとスージー・クアトロの私生児」と謳われているパンク・ロックは、退屈と虚無、そして逃避願望を主なテーマにしたと思しき歌詞の世界も含め、時代を超越した魅力を感じさせるものだった。

僕はそこにアメリカン・ミュージックの醍醐味を感じずにはいられなかった。

インタビューを申込むと、ギターのミミが答えてくれた。



●ヘヴィー・クリームは、どんなふうに始まったんですか?

「ジェシカ(Vo)が全員に招集をかけたのよ。バンド結成を思いついた彼女がダニエル(B)、メリッサ(Dr)、そして私に電話してきて、『セッションしない?』って誘ったの。で、その夜、私達はビールを飲みながら演奏してみたってわけ」
※その後、メリッサは脱退。新たにティファニーが加入した。

●その時、どんなバンドにしようと考えていたんですか?

「誰もそんなことは考えてなかったな。その時、思いついたものをただ演奏しただけよ。たまたま、それがヘヴィーなパンク・サウンドだった。私達全員、70年代のパンクを聴いてきた。ジェシカとメリッサはカントリーも聴いてたみたいだけど、私はもっぱらパンクとハードコアばかりね。ダニエルの音楽の趣味はわからない。めちゃめちゃなのよ(笑)。そういうのがごちゃ混ぜになってヘヴィー・クリームを作ってるのよ」

●ヘヴィー・クリームってバンド名はどこから?

「バンド名のアイディアを、みんなでリストにしてったのよ。馬鹿げたのもあったし、キモいのもあったし、かっこいいのもあった。バンド名を考えるのは、すごく楽しかった。でも、誰一人、バンド名についてコメントなんてできないよ。だって、ただのバンド名なんだもん」

●デビュー・アルバムの『DANNY』について聞かせてください。アルバムを作るとき、どんな作品にしたいと考えていたんですか?

「何も!(笑) その時、バンドが持っていたレパートリーすべてをレコーディングして、7インチ・シングルに入れた“Meow Meow”以外の12曲を入れただけよ」

●レコーディングしている時の何かおもしろい裏話はありますか?

「暖房が何もないところでレコーディングしたんだけど、それがたまたまその冬で一番寒い2日間だったのよ! 手がかじかんじゃってギターを弾くのに苦労したわ。でも、レコーディングそのものは、とても楽しかった」

●『DANNY』では、主にどんなことを歌っているんでしょうか?

「歌詞はジェシカの担当だから私には答えられないな。でも、彼女が書く歌詞にはいつも感心させられる。彼女は素晴らしいストーリーテラーよ」

●『DANNY』はジャケットのアートワークも最高ですね。実は、あのジャケットも僕が『DANNY』を買おうと思った理由の一つなんですよ。あのアイディアはどんなところから思いついたんですか?

「そうなの?! 深い意味なんてないんだけどね。私達がバンドを始めたとき、メリッサがメンバー全員にTシャツを作ってくれたんだけど、私のやつには大きな馬に跨ったメンバー全員の絵が描かれてて……たぶん、みんなそれを気に入ったんじゃないかしら」

●ところで、みなさんはゾーズ・ダーリンズと仲がいいですよね?

「そうなのよ! 彼女達ってイカしてるよね。ナッシュヴィルって狭いと思わない? だって、そうでしょ。(ゾーズ・ダーリンズの)ジェシー・ダーリンはダニーのルームメイトなのよ!」

●多くの人がナッシュヴィルはカントリー・ミュージックの町だと考えているようですけど、実際は、いろいろなタイプのバンドやミュージシャンがいますよね。現在のナッシュヴィルのミュージック・シーンについて、みなさんはどう思っていますか?

「そうね。ナッシュヴィルにはイカしたロッキン・バンドがいっぱいいるのよ。サイ・バークレー、ジェフ・ザ・ブラザーフッド、チープ・タイム、D・ワツシ、ナチュラル・チャイルド、ハンス・コンドー……みんなすごいのよ」

●最後の質問です。ヘヴィー・クリームの次なるステップは?

「そうだな、ロックンロールで世界征服することかしらね」

(インタビュー◎山口智男)


『Danny』
(Infinity Cat)


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