JEFF CAUDILL


家族とともに過ごすことを称えるレコードを作りたかった


ジェフ・コーディル。

今で言うエモメロの走りとして、その後のパンク・シーンの顔になる少なくない数のバンドに影響を与えたゲームフェイスの元フロントマン。

10年以上にわたるバンド活動に終止符を打ち、03年にソロ・キャリアをスタートさせ、よりパーソナルな曲を作りはじめたとき、コーディルの中から出てきた音楽は、物心ついた時から聴いていたフォーク/カントリーやアンクル・テュペロ他、いわゆるオルタナ・カントリー・バンドからの影響が表れたものだった。

遅れてきたオルタナ・カントリー・シンガー、あるいは早すぎたフォーク・パンク・シンガー――。

そんなふうにコーディルのことを紹介することもできるだろう。

この11月、日本盤がリリースされた『トライ・トゥ・ビー・ヒア』は、4年ぶりとなるソロ第2弾アルバム。アメリカではリプレイスメンツ、R.E.M.、ライアン・アダムスなどにたとえられているようだ。しかし、個人的には疾走感とともにアメリカン・ロックのトラディションを湛えたロック・ナンバーの数々を聴き、ジン・ブロッサムズを思い出した。

ゲームフェイスのファンはもちろん、多くのアメリカン・ロック・ファンにも、ぜひ聴いてほしい1枚である。



●あなたが以前やっていたバンド、ゲームフェイスは、ここ日本でも少なくない数のファンから支持されていましたね。

「ゲームフェイスについては、いい思い出しかないよ。あのバンドは10年以上にわたって、僕そのものだったんだ。僕の青春時代の象徴さ。僕らが作ってきた音楽には、とても誇りを持っているよ。まだまだアンダーグラウンドだったパンク・シーンで活動を始められたことはラッキーだった。あの頃、音楽はまだ純粋で、音楽を楽しむことだけがバンド活動の全てだったんだ」

●なぜ、ゲームフェイスは解散してしまったんですか?

「13年経って、違うことをやる時が来たと感じたからさ。音楽的に僕らは僕らにできることを全てやり尽くしてしまったんだ。18歳の時、僕らはバンドを始めた。そして、いつの間にか、責任ある大人に成長していたんだ。ゲームフェイスを続けるという選択肢は、僕らには残されていなかった。ゲームフェイスを解散してからだって、もちろん音楽を続けようとは考えていたけど、でも、それはバンドとしてではなかったんだよね」

●では、ソロ・キャリアを始めたとき、どんな音楽を演奏しようと考えていたんですか?

「ゲームフェイスが解散してから、僕はバンドをやっていたとき以上に曲を作りはじめたんだ。もちろん、その頃はバック・バンドなんていなかったから、アコースティック・ギター1本でたくさんの曲を作ったよ。その多くはバンドの解散について歌った内省的で悲しい曲だった。僕はフォーク・シンガーになったのさ。その時、僕はR.E.M.とかアンクル・テュペロとかウィスキータウンとか、いわゆるオルタナ・カントリーと言われている音楽ばかり聴いていた。実はそういうスタイルの音楽がずっと好きだったんだ。ゲームフェイスをやっていた時でさえ、アンクル・テュペロやバッファロー・トムを聴いていたよ。カントリー・サウンドを持ったロック・バンドをね」

●現在、あなたがやっている音楽に最も影響を与えたアーティストと言うと?

「ボブ・モウルド、ライアン・アダムス、ジェフ・トゥイーディー、レット・ミラーといった人達はいまだに好きだよ。彼らはみんな多作で、特に歌詞がいいんだ。やっぱり、歌詞はとても重要だよね。それからグリーン・デイ、スローン、デス・キャブ・フォー・キューティーといったパワー・ポップも大好きだよ」

●ソロ・アーティストに転向したとき、曲の作り方って変わりましたか?

「いや、それほど変わったとは思わないな。変わったのは、曲をどんなふうに完成させるかってことだよね。ゲームフェイス時代、僕の音楽スタイルはかなり限られていた。僕らはポップ・パンク・バンドで、実際、僕らがやっている音楽はポップ・パンク以外の何物でもなかった。だけど、ソロ・アーティストになってから、僕は多くの異なる音楽スタイルを試しながら、いろいろな楽器を使うことができるようになったんだ。僕はギターとドラムだけのサウンドにこだわっているわけではないんだよ。アコースティック・ギターを使って、同じように曲を作っているけど、今、僕は自分が書いた曲を、どんなふうにでも作り上げることができるんだ」

●今、ライヴをやると、お客さんはどんな人達が多いですか?

「音楽を聴きたいと思っている人達さ!(笑) 音楽シーンや何がクールかなんてことは全然気にしない僕と同世代のおじさん達だよ(笑)。彼らは、ただ音楽を聴くためだけにライヴに来るのさ」

●さっきゲームフェイスをやっている頃からアンクル・テュペロやバッファロー・トムを聴いていたと言っていましたけど、そういうバンドからの影響はゲームフェイスの音楽に反映されていたんでしょうか?

「後期のアルバムには多少反映されていたかもしれないな。曲はほとんど僕が作っていたし、若干、そういう方向にも進んでみようと考えていたしね。そうそう、僕の歌には南部訛りがちょっとあって、カントリーを歌ったらすごくハマるよなんて言う人もけっこういたっけ。もっとも、それが本当かどうかはわからないけどさ(苦笑)。物心ついた頃から、フォークやカントリーを聴いていたから、知らず知らずのうちに影響されていたのかもしれないね」

●この数年、多くのパンク・ミュージシャンがアコースティック・ギター片手にフォーク・ソングを歌いはじめましたよね。フォーク・パンク・ムーヴメントとマスコミが名づけたそんな動きは日に日に大きくなっていますが、それについてはどう思っていますか?

「どうだろう? 僕自身は決して、そういうスタイルの音楽を演奏しようとはっきりと意識して始めたわけではなく、僕の人生において、その時、僕が正しいと感じたことをやり始めただけだからね。たぶん、僕と同じように成長してきたパンク・ミュージシャンが多いってことじゃないかな。パンクとフォークはスピリットという意味では、とても似ているんだ。サウンドは全然違うけど、歌詞やそこで歌われているストーリーは同じなんだよ。以前、バッド・レリジョンのグレッグ・グラフィンがアイディアと精神という意味でなら、バッド・レリジョンはフォーク・バンドだと言っていたよ。僕が大好きな音楽にも同じことを感じるよ。それに多くの成長したパンク・ミュージシャン達がサウンドはどうあれ、彼らにとって意味のある音楽をいまだに作りつづけているって事実は単純にうれしいよね」

●90年代半ばに盛り上がったオルタナ・カントリー・ブームからも影響を受けたようですね。

「ああ。僕はずっとアンクル・テュペロや、彼らと同じシーンから出てきた全てのバンドのファンだった。中でもウィルコ、サン・ヴォルト、オールド97'sからは大きな影響を受けているよ」

●パンク・ロックって最近でも聴きますか?

「それなりにね。新しいバンドを全てチェックしているわけではないけど、何組か大好きなバンドはいるよ。中でもガスライト・アンセムは最近の新しいバンドの中ではダントツの存在だと思うし、ホールド・ステディーもいいよね」

●新作『トライ・トゥ・ビー・ヒア』は、どんな作品ですか?

「大好きなレコードさ! 僕の家族に捧げたという意味で、僕の真心そのものなんだ。ほとんどの曲が妻と5歳の娘とともに過ごすことの大切さについて歌っている。音楽は常に僕の人生の大部分を占めてきたけど、同時にそれは僕と家族を離れ離れにさせてもきた。今回、僕は家族とともに過ごすことを称えるレコードを作りたかったんだよ。アルバムの大半の曲は僕のバッキング・バンドとレコーディングした。彼らはみんな素晴らしいミュージシャンであると同時に大切な友人でもあるんだ」

●もしドリーム・バンドを組めるとしたら、メンバーとして誰を選びますか?

「うわ。難しい質問だな(笑)。そうだなぁ……まず、ギターはウィルコのネルス・クラインとビルト・トゥ・スピルのダグ・マートシュ。ドラムはデイヴ・グロールに頼みたい。で、インキュバスのベン・ケネディーがベースで、エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズのスティーヴ・ニーヴがキーボードで、どうだい? きっとへンテコなサウンドになるだろうな。でも、今、僕が共演したい人達なんだからしかたない!(笑)」

●来年の1月には来日公演の予定もあるそうですね。

「そうなんだ! 初めての日本だからね、今からワクワクしているんだ。みんなに会えることを楽しみにしているよ!」

(インタビュー◎山口智男)


『TRY TO BE HERE』
(BULLION)



★★★ 来日公演決定 ★★★

Bullion Presents
Jeff Caudill - Try To Be Here Release Party



2010年1月23日(土) 渋谷キノト

【出演】
Jeff Caudill(ex-Gameface)
Valve Drive
Easel
Neko!
Parms
Hopless Dew

DJ Tomoo Yamaguchi

前売/当日 2000yen / 2300yen ( + 1Drink)
開場/開演 18:00/18:30

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