競争にはうんざりさ。
僕らはもっと楽しくやりたいんだよ
現在、ロサンゼルスのクラブ・シーンでは、かつてオルタナ・カントリーと言われていたバンドよりも若い世代のルーツ・ロック・バンド達がしのぎを削っているという。
オリン&ザ・ムーンはそんなロサンゼルス・シーンで近年、じわじわと注目を集めてきた。
彼らはアイダホ出身のデヴィッド(Vo, G)とトラヴィス(G)のラブレル兄弟と彼らの旧友であるマーシャル・ヴォア(Dr)が05年頃、ロサンゼルスで結成した5人組。
その彼らが今年5月にリリースした最新アルバム『Terrible Town』は初期の彼らが持っていたインディー・ロック臭さが抜けるとともに一皮剥けたソングライティングと、よりこなれたことを思わせるバンド・アンサンブルをアピールする充実の1枚だ。
フォーク/カントリーからの影響が向こうっ気の強さを窺わせる演奏に溶けこんだその音楽性を一言で表現するならば、フォーク・ロックということになるんだろう。しかし、メンバー達の青春が結晶化したことを思わせる曲の数々は、たとえばティーンエイジ・ファンクラブがそう言われているように敢えてギター・ポップと表現したいみずみずしさも湛えている。
夢と現実を行き来する中で生じたロサンゼルスに対する愛憎入り混じる想いを託した『Terrible Town』は後々、彼らのキャリアにとってターニングポイントになった作品として記憶されるにちがいない。
タイトル・ナンバーに加え、茫漠たる北米大陸を旅するバンドマンの心情を歌い上げた「Drivin’ West」「40 Miles Of Bad Road」などは今後、ライヴの定番としてファンに愛されつづけることだろう。
もちろん、精力的にツアーを行っているとは言え、その活動はまだまだローカル・バンドの域を出るものではない。しかし、バンドの平均年齢は22歳。
彼らのキャリアはまだ始まったばかりだ。
バンドを代表して、デヴィッドが快くインタビューに応じてくれた。
●元々、デヴィッドはアイダホのサン・ヴァレーで、お兄さんのトラヴィスとマーシャルとバンドを始めたそうですね。
「うん、そうなんだ」
●ロサンゼルスにはいつ?
「えっと、4年前ぐらいかな」
●他にもいっぱい音楽の盛んなところってあると思うんですけど、なぜロサンゼルスを選んだんですか?
「ああ。それはね、元々、ロサンゼルスにはミュージック・スクールに通うために来たんだよね。マーシャルはドラム、アニキと僕はレコーディングについて学んだんだ。確かに、ロサンゼルス以外にも選択肢はいっぱいあったけど、何て言うか、ロサンゼルスはアイダホから近かったし、バンドをやるには一番いいんじゃないかって思えたんだよ」
●ロサンゼルスに来て、すぐにステージに立てたんですか?
「いやぁ、ライヴをやるまでにはものすごく時間がかかったよ。マーシャルと僕は、まずデモCDやプロフィールをハリウッド中のクラブに配ることから始めたんだ。結局、ロキシーが試しに1回、やってみるかってチャンスをくれてね。それから時々、演奏させてもらえるようになったんだ。でも、町の東側でライヴをやるには、それから2年かかったよ。町のそっち側には僕らと同じようなバンドがいっぱいいてね。そこに入りこむには、ちょっと時間がかかったな」
●今のバンドを始めたとき、どういう音楽をやりたいかはっきりした方向性ってあったんですか?
「実はマーシャルと僕は元々、ハードコア・バンドをやってたんだよ。でも、自分で曲を作りはじめたら、なぜだかフォーキーになっちゃてさ(笑)。思うに、両親が家で聴いていた音楽に知らず知らずのうちに影響されてたんだね。こういう音楽をやろうなんて考えたことは一度もないよ。やってみたら、こういう音楽になったってだけでさ。ただ、曲を作りはじめたとき、ブライト・アイズはかなり聴いてたけどね(笑)。影響はかなり受けていると思うよ」
●マーシャルとトラヴィスとは、どんなふうにバンドを始めたんですか?
「もうずっと一緒に音楽をやってるんだよね。自分が作った曲をレコーディングしようと思って、マーシャルにドラムを叩いてよって頼んだのが最初かな。その頃、トラヴィスはモンタナに住んでたんだけど、僕らがロサンゼルスに行くって話をしたら、モンタナでやることもないからって一緒についてきたんだよ(笑)」
●オリン&ザ・ムーンに影響を与えたアーティストと言うと?
「そうだな、ブライト・アイズだろ。それからライアン・アダムス、ニール・ヤング、スティーヴ・アール…このリストはいくらでも続けられるけど(笑)、両親が聴いていた昔のフォークの人達からもずいぶん影響は受けていると思うよ。僕らはそれを子守歌代わりに聴いてたんだからね」
●そう言えば、オンラインショップのCD BABYはライアン・アダムスとブライト・アイズを引き合いにして、オリン&ザ・ムーンを紹介していましたね。
「そう! 大好きなアーティストと比べられるなんて、とても光栄なことだよ」
●その他に注目しているとか、やっていることに共感できるアーティストっていますか?
「僕らの友達のレスリー&ザ・バッジャーズはいいよ。彼女達は本当にすごいんだ」
●ところで、オリン&ザ・ムーンってバンド名の由来は? オリンって名前のメンバーはいませんよね。
「あー、それはね。たまたま思いついたって言うか、何と言うか。ゴメン、それについて話せることはホント、何もないんだよね(笑)」
●今年5月にリリースした最新アルバム『Terrible Town』は、いい曲満載の素晴らしい作品でしたね。
「うん、自信作だよ。これまでに3枚のアルバムを作ってきたけど、100%満足したことってなかったんだ。だけど、『Terrible Town』では初めて、自分が誇りに思えることをやり遂げることができたって実感したよ」
●タイトルの『Terrible Town』ってロサンゼルスのことですか?
「収録曲の全てをロサンゼルスに結びつけなくてもいいけどね。ただ、タイトル曲を作ったとき、僕がロサンゼルスに対して、ちょっとした敵意を抱いていたことは確かだよ。僕らはこの町の音楽に対する態度にうんざりしかけていたんだ。競争とか何だとか、そんなことにね。それに、ぼーっと突っ立って、そうすることがクールなんだと言わんばかりに腕組みしながらいかにもつまらなそうにしている連中の前で演奏することにも飽き飽きしていた。僕らはもっと楽しくやりたいんだよ。そう、確かにその時、僕はロサンゼルスに失望していた。だけど、そう言いながら、僕らはまだここが大好きなんだけどね(苦笑)。あ、家賃の高さを除いてね」
●ロサンゼルスでは、多くの若いルーツ・ロック・バンドがしのぎを削っているようですね。
「ああ。競争はそりゃもう激しいよ。うんざりさせられるぐらいにね」
●オリン&ザ・ムーンはツアー活動にも精力的ですよね?
「ツアーは大好きなんだ。僕達が本当にやりたいのは、ツアーだけだと言ってもいいぐらいさ。年間365日、ツアーできたら最高だろうな。ロックして、バカ騒ぎするんだ。僕にとってツアーはヴァケーションみたいなものなのさ(笑)」
●現在、オリン&ザ・ムーンはCDを自分達でリリースしているけど、将来的にはどこか大きなレーベルと契約したいと考えていますか?
「もちろん、それを望んでいるよ。それまでは自分達の力でがんばらなきゃね」
●どんなレーベルと契約したいですか?
「ニュー・ウェストとかロスト・ハイウェイとかみたいなレーベルがいいね」
●最後に今後の予定を教えてください。
「まず、ツアー、ツアー、ツアー。それから6ヶ月以内に新しいレコードをリリースつもりさ!」
(インタビュー◎山口智男)
僕らはもっと楽しくやりたいんだよ
現在、ロサンゼルスのクラブ・シーンでは、かつてオルタナ・カントリーと言われていたバンドよりも若い世代のルーツ・ロック・バンド達がしのぎを削っているという。
オリン&ザ・ムーンはそんなロサンゼルス・シーンで近年、じわじわと注目を集めてきた。
彼らはアイダホ出身のデヴィッド(Vo, G)とトラヴィス(G)のラブレル兄弟と彼らの旧友であるマーシャル・ヴォア(Dr)が05年頃、ロサンゼルスで結成した5人組。
その彼らが今年5月にリリースした最新アルバム『Terrible Town』は初期の彼らが持っていたインディー・ロック臭さが抜けるとともに一皮剥けたソングライティングと、よりこなれたことを思わせるバンド・アンサンブルをアピールする充実の1枚だ。
フォーク/カントリーからの影響が向こうっ気の強さを窺わせる演奏に溶けこんだその音楽性を一言で表現するならば、フォーク・ロックということになるんだろう。しかし、メンバー達の青春が結晶化したことを思わせる曲の数々は、たとえばティーンエイジ・ファンクラブがそう言われているように敢えてギター・ポップと表現したいみずみずしさも湛えている。
夢と現実を行き来する中で生じたロサンゼルスに対する愛憎入り混じる想いを託した『Terrible Town』は後々、彼らのキャリアにとってターニングポイントになった作品として記憶されるにちがいない。
タイトル・ナンバーに加え、茫漠たる北米大陸を旅するバンドマンの心情を歌い上げた「Drivin’ West」「40 Miles Of Bad Road」などは今後、ライヴの定番としてファンに愛されつづけることだろう。
もちろん、精力的にツアーを行っているとは言え、その活動はまだまだローカル・バンドの域を出るものではない。しかし、バンドの平均年齢は22歳。
彼らのキャリアはまだ始まったばかりだ。
バンドを代表して、デヴィッドが快くインタビューに応じてくれた。
●元々、デヴィッドはアイダホのサン・ヴァレーで、お兄さんのトラヴィスとマーシャルとバンドを始めたそうですね。
「うん、そうなんだ」
●ロサンゼルスにはいつ?
「えっと、4年前ぐらいかな」
●他にもいっぱい音楽の盛んなところってあると思うんですけど、なぜロサンゼルスを選んだんですか?
「ああ。それはね、元々、ロサンゼルスにはミュージック・スクールに通うために来たんだよね。マーシャルはドラム、アニキと僕はレコーディングについて学んだんだ。確かに、ロサンゼルス以外にも選択肢はいっぱいあったけど、何て言うか、ロサンゼルスはアイダホから近かったし、バンドをやるには一番いいんじゃないかって思えたんだよ」
●ロサンゼルスに来て、すぐにステージに立てたんですか?
「いやぁ、ライヴをやるまでにはものすごく時間がかかったよ。マーシャルと僕は、まずデモCDやプロフィールをハリウッド中のクラブに配ることから始めたんだ。結局、ロキシーが試しに1回、やってみるかってチャンスをくれてね。それから時々、演奏させてもらえるようになったんだ。でも、町の東側でライヴをやるには、それから2年かかったよ。町のそっち側には僕らと同じようなバンドがいっぱいいてね。そこに入りこむには、ちょっと時間がかかったな」
●今のバンドを始めたとき、どういう音楽をやりたいかはっきりした方向性ってあったんですか?
「実はマーシャルと僕は元々、ハードコア・バンドをやってたんだよ。でも、自分で曲を作りはじめたら、なぜだかフォーキーになっちゃてさ(笑)。思うに、両親が家で聴いていた音楽に知らず知らずのうちに影響されてたんだね。こういう音楽をやろうなんて考えたことは一度もないよ。やってみたら、こういう音楽になったってだけでさ。ただ、曲を作りはじめたとき、ブライト・アイズはかなり聴いてたけどね(笑)。影響はかなり受けていると思うよ」
●マーシャルとトラヴィスとは、どんなふうにバンドを始めたんですか?
「もうずっと一緒に音楽をやってるんだよね。自分が作った曲をレコーディングしようと思って、マーシャルにドラムを叩いてよって頼んだのが最初かな。その頃、トラヴィスはモンタナに住んでたんだけど、僕らがロサンゼルスに行くって話をしたら、モンタナでやることもないからって一緒についてきたんだよ(笑)」
●オリン&ザ・ムーンに影響を与えたアーティストと言うと?
「そうだな、ブライト・アイズだろ。それからライアン・アダムス、ニール・ヤング、スティーヴ・アール…このリストはいくらでも続けられるけど(笑)、両親が聴いていた昔のフォークの人達からもずいぶん影響は受けていると思うよ。僕らはそれを子守歌代わりに聴いてたんだからね」
●そう言えば、オンラインショップのCD BABYはライアン・アダムスとブライト・アイズを引き合いにして、オリン&ザ・ムーンを紹介していましたね。
「そう! 大好きなアーティストと比べられるなんて、とても光栄なことだよ」
●その他に注目しているとか、やっていることに共感できるアーティストっていますか?
「僕らの友達のレスリー&ザ・バッジャーズはいいよ。彼女達は本当にすごいんだ」
●ところで、オリン&ザ・ムーンってバンド名の由来は? オリンって名前のメンバーはいませんよね。
「あー、それはね。たまたま思いついたって言うか、何と言うか。ゴメン、それについて話せることはホント、何もないんだよね(笑)」
●今年5月にリリースした最新アルバム『Terrible Town』は、いい曲満載の素晴らしい作品でしたね。
「うん、自信作だよ。これまでに3枚のアルバムを作ってきたけど、100%満足したことってなかったんだ。だけど、『Terrible Town』では初めて、自分が誇りに思えることをやり遂げることができたって実感したよ」
●タイトルの『Terrible Town』ってロサンゼルスのことですか?
「収録曲の全てをロサンゼルスに結びつけなくてもいいけどね。ただ、タイトル曲を作ったとき、僕がロサンゼルスに対して、ちょっとした敵意を抱いていたことは確かだよ。僕らはこの町の音楽に対する態度にうんざりしかけていたんだ。競争とか何だとか、そんなことにね。それに、ぼーっと突っ立って、そうすることがクールなんだと言わんばかりに腕組みしながらいかにもつまらなそうにしている連中の前で演奏することにも飽き飽きしていた。僕らはもっと楽しくやりたいんだよ。そう、確かにその時、僕はロサンゼルスに失望していた。だけど、そう言いながら、僕らはまだここが大好きなんだけどね(苦笑)。あ、家賃の高さを除いてね」
●ロサンゼルスでは、多くの若いルーツ・ロック・バンドがしのぎを削っているようですね。
「ああ。競争はそりゃもう激しいよ。うんざりさせられるぐらいにね」
●オリン&ザ・ムーンはツアー活動にも精力的ですよね?
「ツアーは大好きなんだ。僕達が本当にやりたいのは、ツアーだけだと言ってもいいぐらいさ。年間365日、ツアーできたら最高だろうな。ロックして、バカ騒ぎするんだ。僕にとってツアーはヴァケーションみたいなものなのさ(笑)」
●現在、オリン&ザ・ムーンはCDを自分達でリリースしているけど、将来的にはどこか大きなレーベルと契約したいと考えていますか?
「もちろん、それを望んでいるよ。それまでは自分達の力でがんばらなきゃね」
●どんなレーベルと契約したいですか?
「ニュー・ウェストとかロスト・ハイウェイとかみたいなレーベルがいいね」
●最後に今後の予定を教えてください。
「まず、ツアー、ツアー、ツアー。それから6ヶ月以内に新しいレコードをリリースつもりさ!」
(インタビュー◎山口智男)
『Terrible Town』
(Self-Released)