Vol. 1

カウボーイ・ブーツは持ってきたかい!? イーハー!
世界最大規模の音楽見本市の模様をレポート



3月15日(水)
■午後8時〜 The Vacation @ La Zona Rosa(612 W.4th)


ドラマー以外のメンバー全員が安っぽい革ジャンでキメているLAのハード・ロック4人組。けれんみたっぷりのパフォーマンスを見ているうちに「ザ・ダークネスへのアメリカからの回答」なんて言葉が浮かんできた。
そのけれんみがザ・ダークネスぐらい際立ってくれば、おもしろい存在になる可能性もありそうだ。
■午後8時55分〜 Jack's Mannequin @ La Zona Rosa(612 W.4th)

彼らのライヴを見ることは、今回のSXSWの目的の一つだったと言ってもいい。
ちょうど1年前、ここオースチンでジャックス・マネキンのライヴを見たときは正直、ピンと来なかった。なぜなら、アンドリュー・マクマホン(VO,P)がサムシング・コーポレイトの活動を休んでまで、このソロ・プロジェクトを始めた理由が、ついに伝わってこなかったからだ。
しかし、今年は全然違った。
その熱演は昨年の夏、彼らがリリースしたデビュー・アルバム『エヴリシング・イン・トランジット』を聴いたときに感じた「サムシング・コーポレイトよりもいいじゃん!」という思いを確信に変えさせる気迫に満ちたものだった。
白血病を克服して、再びロック・シーンに戻ってきたアンドリューがダイレクトに伝えるエモーションに思わず涙ぐんでしまった(それにしても女の子のファンが多い。「アンドリューと目が合った目が合った」と大騒ぎしている目の前の女の子の姿が微笑ましかった)。
感動の余韻をひきずったまま、6thストリートに戻る。


■午後10時〜 American Princes @ Nuno'S Upstairs(422 E.6th)

ロバート・スコロ、シティーズ、ザ・スタンダードらが出演したイエップ・ロック・インディーのショウケース。
ここでルセロのメンバーと再会。一緒にアメリカン・プリセンスの熱演を見る。
ハードコアの影響も聴きとれるソリッドかつクールなロックンロールは、なかなかにユニークだと思う。しかし、いかんせん歌と演奏が、その志に追いついていない。はっきり言えば、ヘタクソなのだ。だから、熱演も空回りしているように見える。うーん、ちょっとがっかり。
ルセロのメンバーと別れ、次のライヴへ。
■午後11時〜 Cuff The Duke @ Creekside EMC at Capitol Place(500 N.I-35)
ホテルのラウンジという不思議なシチュエーション。
これもまた、いわゆるライヴ・ヴェニューではない場所がライヴ会場になるSXSWのおもしろさ、か。
カフ・ザ・デュークはトロントの若きカントリー・ロック・バンド。
いかにもよそいきっぽい衣装でキメたシンガー兼ギタリストのウェイン・ペティの姿が微笑ましい。
やはり、SXSWは晴れの舞台なんだろう。
本人達がそれを思いっきり楽しんでいることは伝わってきた。しかし、演奏はまだまだ修行が必要だ。アップテンポの曲は勢いで聴かせるものの、テンポを落とした曲になると、表現力の弱さが露になってしまう。
正直、深い時間になると、そういうライヴは疲れと時差ボケにやられた体には非常に辛い。途中、何度か睡魔に襲われ、閉口した。
■午後12時〜 Irvin @ The Velvet Spade Patio(912 Red River)
気分転換を兼ねて、シルヴァー・レイクの5人組アーヴィンを見るためにレッド・リヴァー通りにあるヴェニューに移動。
アーヴィンはフロントに立つ3人がそれぞれにリード・ヴォーカルを担当するインディー・ロック・バンド。最新作『デス・イン・ザ・ガーデン、ブラッド・オン・ザ・フラワーズ』は「テレヴィジョン・ミーツ・ゾンビーズ」とでも表現したいユニークな作品だった。
30分押しでスタートしたため、15分ぐらいしか見ることができなかったけれど、いかにもUSインディー然としたクールなギター・ロック・サウンドと爽やかなハーモニーを聴かせるアーヴィンのライヴもまた、素晴らしいものだった。
もっと見ていたかったが、午前1時からマット・メイズ&エル・トーピドーを見るために、泣く泣くさっきカフ・ザ・デュークを見たキャピトル・プレイス・ホテルに戻る。
■午前1時〜 Matt Mays & El Torpedo @ Creekside EMC at Capitol Place(500N.I-35)
マット・メイズ率いるカナダはノヴァ・スコアシ州ダートマウスの5人組。
彼らはまさに現代のニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース、あるいはトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズと呼びたい連中だ。
ヒルビリー風のルックスもかっこいい。
昨年、リリースしたセルフ・タイトルのアルバムはかなり愛聴していたので、今回のSXSW出演、けっこう期待していたんだけれど、アルバムで聴いていた以上にもっさりした演奏に、また睡魔が……。しかも、ホテルのラウンジでイスに座ってというまったりしたシチュエーションに加え、ミッドテンポ・ナンバーのオンパレードについにダウン。曲の途中でメンバー全員揃ってパン・パッパン! と叩いた手拍子に驚いて、我に返るまで、不覚にも途中の記憶がない。
ライヴが終わってから、「どうだった?」と同行者に尋ねたところ、「演奏に迫力があってかっこよかった」そうだ。
最後にやった彼らの代表曲「Cocaine Cowgirl」は確かにかっこよかった。
チャンスがあれば、体調が万全のとき、改めて見てみたい。
時計はすでに午前2時を回っている。
それでもまだ、6thストリートは賑わっている。
いつものことであるけれど、ライヴが終わったあと、丘の上のホテルに戻る5ブロック分の急な坂道は、疲れた体にはけっこうきつい。
ホテルに戻ると、早速、熱いシャワーを浴び、冷たいビールを飲む。うまい。1日のしめくくりにはふさわしいうまさ。
それが呼び水になったのか、急に空腹を覚える。そう言えば、夕食を食べそびれ、途中、6thストリートのピザ・スタンドでピザを一切れ頬張ったきり何も食べていない。腹も減るわけだ。
そこで日本から持参したパックのごはんをレンジで温め、安ワインの肴代わりにして空腹を満たす。
そうこうしているうちに酔いと疲れが一つになり、そのままたぶん午前4時頃、眠ってしまった。
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