TIM EASTON interview

MAKIN' THE ROCK'N ROLL NOISE


Tim Easton

新作のレコーディングを終えたばかりなんだ。
たぶん、これまでで一番いい作品になるよ




ティム・イーストンもまた、オルタナ・カントリー・ブームとともにシーンに浮上してきたシンガー・ソングライターの1人だった。

その頃、日本でもずいぶん人気があったナッシュヴィルのプロデューサー、ブラッド・ジョーンズに認められたヘインズ・ボーイズを経て、98年、ひきつづきジョーンズのバックアップを受け、ソロ・デビューを飾ったイーストンは、ウィルコやライアン・アダムス率いるウィスキータウンほど脚光を浴びたわけではない。

古いフォークやブルースを基調としたイーストンのソングライティングは、ロック・スターになるには渋すぎたのだろう。しかし、それが却ってよかった。流行に惑わされない音楽ファンはイーストンをホンモノと歓迎した。

思えば、ロック・シーンに現れてきたとき、彼はすでに30歳目前だった。ソロ第1弾アルバム『Special 20』を聴けばわかるようにイーストンの音楽スタイルは、その時点ですでに完成していた。いや、完成という言葉が言いすぎならば、ソロ・デビューしたとき、イーストンは自分がどういう音楽をやりたいのかということを、ちゃんとわかっていたと言い換えてもいい。

以来、ソロとバンド編成を使い分けたツアーとアルバムのリリースを地道に続けながら、ソングライティングの才能を磨き上げてきたイーストンは今や、かつて同じシーンで活動していた誰よりもアーティストとして充実しているように見える。

オルタナ・カントリー・ブームは単にきっかけにすぎなかった。イーストンは自分がやるべきことを、地道に、しかし確信を持ってやりつづけてきた。

今年、イーストンがリリースした最新5thアルバム『Porcupine』は、そんな10年の成果を思わせる最高傑作だ。



●来日公演が近づいてきましたね。

「そうだね。初めてのジャパン・ツアーだから、今からわくわくしているよ。子供の頃、日本に住んでいたんだけど、きっとずいぶん変わっているんだろうな。もうすぐ現在の日本と、文化の発展を体験できると思うと、興奮せずにいられないよ。子供の頃はおいしさがわからなかった日本食にも改めて挑戦してみたいね」

●日本には3年間住んでいたそうですね。

「そう。70年代にね!」

●何か、その頃の思い出ってありますか?

「もちろん。日本には8歳から10歳までの間、住んでいたんだ。だから、いろいろ思い出はあるよ。中でも友人達と東京をぶらぶらしたことは、はっきりと覚えているよ。自分達だけで地下鉄に乗ったんだぜ。それと、『AH NU NA NU NAY』とか何とかってテレビ番組にも出演していたんだ。2人の日本人コメディアンとアメリカ人の子供のグループが毎週、コントを演じる子供向けのバラエティー番組だったんだけど、知ってる?」

●たぶん、あのねのねのことだと思うんだけど、そういう番組は知らないなぁ…。

「そう。今思い出したんだけど、番組で柔道を習ったりしたんだよなぁ。76年とか77年とかの話なんだけど」

●『ヤンヤン歌うスタジオ』かな。それについては調べてみますね。ところで、あちこち移り住んだのち、この数年はジョシュア・トゥリーに落ち着いていますよね。暮らすにはいいところなんですか?

「ああ。とてものんびりしていて、静かなところだよ。音楽を演奏したり、絵を描いたり、犬と散歩したりハイキングに出かけたりするぐらいしかやることもないしね。長いことツアーしたあと、帰るには最適の場所さ。ホントくつろげるんだよ」

●ツアーと言えば、トゥー・カウ・ガレージとか、ウィップソウズとか、毎回、いろいろなバンドをバック・バンドとして起用していますね。そういうバンドは、どんなふうに見つけるんですか?

「素晴らしいミュージシャンはいっぱいいるからね。要はタイミングの問題なのさ」

●ツアー・バンドを選ぶ条件は?

「一緒に旅して楽しい連中じゃなきゃね。やっぱり、それは大事だよ」

●もしドリーム・バンドを組めるとしたら、メンバーとして誰を選びますか?

「うーんとね、今、一緒にやっている連中。西海岸はジョシュア・トゥリー・アーミー・バンドと回っているんだ。ダミアン・レスターがベースで、ベンジャミン・ポールがドラムなんだ。それとフリーランド・バロンズ・バンドね。ギターはニューヨークのアーロン・リー・タスジャン、ドラムはロサンゼルスのマーク・ステプロ、ベースはオースチンのアレックス・リヴィングストン。俺達は3週間のツアーとレコーディングを終えたばかりなんだ。たぶん、そのレコードはこれまでで一番いい作品になると思うよ。これからミックスに取りかかるところなんだけど、来年、リリースできたらいいね」

●フリーランド・バロンズ・バンドは今年3月のSXSWでバックを務めていましたね。彼らとはどんなふうに知り合ったんですか?

「アーロンとマークは、連中がまだガキだった頃、俺が演奏していたオハイオのバーに忍び込んできたのさ」

●そう言えば、トゥワング・フェストのステージにアーロンは遅刻してきましたね。彼は自分の出番を忘れていたんですか?

「あのライヴは直前に決まったんだよ。出演をキャンセルしたバンドがいて、代わりに演奏できるかって電話をもらってね。それで俺達は慌てて駆けつけた。たまたまアーロンが最後に辿りついたってだけでね。奴が忘れていたわけじゃないよ」

●今年4月にリリースした最新アルバム『Porcupine』は以前のアルバムよりもロッキンな作品になりましたね?

「うん、そうだね。確かによりロッキンだ」

●作りはじめたとき、どんな作品にしようと考えていたんですか?

「若い頃、オハイオで聴いていたような騒々しいロックンロールをやりたかったんだ。それと静かな曲もちょこっとね」

●プロデューサーとエンジニアにブラッド・ジョーンズとロビン・イートンを起用した理由は? 彼らと組んで、ナッシュヴィルでレコーディングするのは『Special 20』以来、ほぼ10年ぶりですよね。

「アレンジ面で、いろいろ助けてもらえると思ったのさ。2人は曲の生かし方を熟知しているからね。それに彼らとなら気を遣う必要もない。長年の友達なんだよ。そもそも、俺にデビューのチャンスをくれたのは彼らだったんだからね」

●「Stormy Monday」は『Porcupine』の中でも大好きな曲なんですけど、まるでザ・フーの「マイ・ジェネレーション」とヤードバーズの「アイム・ア・マン」を組み合わせたようなアレンジがかっこいいですね。元々の曲はソニー・テリーとブラウニー・マクギーのブルース・ナンバー「Old Jabo」なんだとか。

「そうなんだ。大好きな曲でさ、昔よく路上ライヴで演奏したよ。コードを1つしか使っていない曲だったから、演奏しながらいろいろいじって、結局、オリジナルの歌詞と今のアレンジを加えて、改作しちゃったんだ。敬意を表して、元々の歌詞もいくつか残しているけどね」

●ところで、エコー&ザ・バニーメンにも『ポーキュパイン(やまあらし)』というアルバムがありましたね。

「あったね。だけど、彼らのベストと言える作品ではないと思うね。俺の『Porcupine』はそれよりももっとロックしているよ」

●すでに新作のレコーディングを終えたとか。

「そう! もう完成間近なんだ。『Porcupine』と同じスタジオで先週、レコーディングしたんだけど、今回は俺達バンド自身によるプロデュースなんだ。そこにはバンドと一緒にツアー中に練り上げ、レコーディングする前に数週間にわたって演奏してきたロックやらフォークやら、いろいろな曲が収録されているよ」

●では、最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

「ありがとう! 来日ツアーで会えることを楽しみにしているよ。『AH NU NA NU NAY SHOW』のビデオを持っている人がいたら最高なんだけどな。どこかに俺が着物とかつらをつけて芸者の格好をしている映像があるはずなんだよ!(笑) ウソじゃないぜ。それをアルバムのジャケットに使ったら最高だろ(笑)。いや、もちろん本気じゃないけど、その映像をもう一度見ることができたら爆笑ものだな」

(インタビュー◎山口智男)






『PORCUPINE』
(New West)



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